メルマガ「写真を楽しむ生活」に連載したコラムです。 本邦初の裸で見る写真展「裸・展」プロジェクトはどのように発足し、私はどのような経緯で参加に至ったのかをご紹介します。
連載第1回 「裸・展」ってナニ!? (3月6日掲載)
連載第2回 最初のきっかけは、写真展開催のわずか2か月前!(3月13日掲載)
連載第3回 すべてデジタルな作品制作 (3月18日掲載)
連載第4回 お風呂の写真展にみなビックリ (3月26日掲載)
2003年3月6日掲載
■「本邦初・裸で見る写真展「裸・展」報告 <連載第1回>
「裸・展」ってナニ!?
「写真を楽しむ生活」読者の皆様、はじめまして。
「風の写真館」の永井孝尚と申します。
私は会社勤務の傍ら、個展の形で写真作品を発表し続けています。
今まで、コダックイマジカ、キヤノンサロンやドイフォトプラザ
等で5回写真展を開催致しました。【注】 前回まではオーソドッ
クスな形式の写真展だったのですが、現在、今までにない全く新
しいコンセプトの会場で写真展を行っています。
その名も、「裸・展 RA-TEN」というユニークな名前です。
お風呂(温浴施設)の浴室内壁面を利用し写真作品を展示、お客
様は入浴を楽しみながらリラックスして写真を鑑賞いただくもの
です。
これはコナミスポーツクラブ「湯の国ジャポン」の入間店(埼玉)
川越店(埼玉)、都賀店(都賀)の3施設で3か月間順次展示する
という大規模な写真展で、今回記念すべき第一回「裸・展」へ下
記3シリーズ各30点(計90点)を出展しています。
・Tokyo Bay Area: 普段見ることが出来ない、東京湾岸のポート
レイト
・風の景色:海外リゾートの何気ない風景
・Graceful Flowers:花の幻想的な優しい表情
温浴施設の中での本格的な写真展は、恐らく本邦初と思われます。
なお、裸の写真は一枚もありませんので、お間違えのなきよう…
(笑)
「写真を楽しむ生活」編集部宛に、写真展イベント告知のお願い
をしたところ、柴田編集長より「本邦初のすごいイベントだし、
単にイベント告知するだけではもったいないので記事を書いて下
さい。この企画の理由、実現までの経過、技術的な課題、実際の
展示の状態、反応、等々。非常に興味あります」というありがた
いお話をいただきました。
そこで、これから4回に分けて、今回の写真展開催に至った経緯
や裏話などをご紹介していきたいと思います。よろしくお付き合
い下さいますよう、お願い申し上げます。
第2回目は「裸・展」のきっかけについてご紹介します。
写真展の案内は下記サイトにあります。
<http://www.takahisanagai.jp/photoexhibition/raten/raten.html>
【注】今まで写真展を開催してきた経験談を元に、写真展開催の
ノウハウをホームページで紹介しております。アマチュアでいつ
か写真展を開催したいという方々にご参考いただければ幸いです。
URLは以下。
<http://www.takahisanagai.jp/photoexhibition/photoexhibition.html>
【永井孝尚】<mailto:nagai@home.people.or.jp>
風の写真館 <http://www.takahisanagai.jp>
2003年3月13日掲載
■連載第2回「本邦初・裸で見る写真展「裸・展」報告
最初のきっかけは、写真展開催のわずか2か月前!
「写真を楽しむ生活」読者の皆様、こんにちは。
「風の写真館」の永井孝尚です。
本連載では、本邦初の温浴施設の中での写真展、「裸・展」プロ
ジェクト参画に至った経緯をご紹介しています。連載第2回目の
今回は、そのきっかけをご紹介致します。
実は私はIT関連会社に勤務しており、普段はITソリューション関
連のマーケティング・マネージメントという、堅めの仕事をして
います。ということで、生計を立てている仕事と写真は全く関わ
りがないのですが、写真活動はライフワークの一つとして、学生
時代の頃から20年程続けています。
個展は88年から99年まで5回開催しました。また、写真を発表す
るもう一つの手段として、ホームページを1996年に開設、2002年
中頃までのべ15万人の方々に訪問をいただいていました。
そんな状況で写真と関わってきたのですが、「裸・展」参画への
きっかけは2002年の中頃までさかのぼります。
この前の年までは、写真撮影はそれなりに続けていたのですが、
最後の写真展から3年以上経過し、ホームページ更新も一休みの
状態でした。社会人大学院に通ったり、また、仕事が非常に忙し
くなったりして、なかなか撮影以外の写真活動の時間が取れない
時期が続いていました。
2002年夏頃になり、デザインが古臭くなってきたホームページを
一新する余裕が出てきて、100点以上の作品を順次フィルムスキ
ャナーで読み込ませて画像をチューニングして新しいホームペー
ジを作りこんでいました。元のホームページが結構なボリューム
なので、3〜4か月間位かかるかなぁ、といったところでした。
そんな作業を続けていた2002年11月中旬のある日、一通のメール
が届きました。コナミスポーツクラブ入間の営業を担当されてい
る井澤さんという方からのメールでした。下記のような内容で誠
実さが伝わってくる文章でした。
・お風呂での未だかつてないイベント、市場に話題性、意外性、
注目性を投げかける新企画として裸で見る写真展開催を考えてい
ます。文字通り温浴施設内の壁面を利用し、裸(お風呂)で作品
を鑑賞するという変わったスタイルになります。
・開催に至るまで様々な問題が予想されますが、現在、新たなる
パブリシティとしての活用に賛同して頂けるアーティストを探し
ている状況です。
・現実的なご意見を聞かせて頂ければと思い連絡を差し上げまし
た。本企画に興味がございましたら是非ご連絡をお願いいたしま
す。(一部抜粋)
一週間後、新宿コニカプラザで、井澤さんと、コナミスポーツク
ラブ川越で営業を担当されている末政さんとお会いし、お話しを
しました。
写真展の開催方法を調べていくうちに、私のホームページに辿り
着いたようです。確かにYahoo!で「写真展開催 ノウハウ」で検
索すると、ヒットするのは私のホームページだけです。(笑)
「参考になるなぁ」と読んでいるうち、「どんな作品を撮ってい
るんだろう?」と興味も涌き作品も見たところ、イメージとピッ
タリだったので、正直ダメモトで連絡した、ということでした。
一時間ほど話した結果、一緒に協力し合って写真展を開催しよう
ということになりました。写真展開催にあたり、クリアしなけれ
ばならない課題点として話し合ったのは次の通りでした。
1.写真作品が、高温多湿の環境で3か月という長期間、耐えられ
るか?
2.三施設合同の新春企画として時間的に1月開催へ間に合うか?
3.浴室内壁面に大掛かりな駆体工事は出来ない為、作品を飾るに
はどうすればよいのか?
4.ギャラリーとは違い高温多湿の浴室内に照明の増設は出来ない
為、照度はどうするか?
5.前例はもちろん、実績もない企画なので、社内承認を得て尚且
つ予算を付けられるか?
6.写真、専門家の作品を美しく再現できるのか?
他にも課題は多いのですが、とりあえず「裸・展」はこんな感じ
でスタートしました。
数回もの打合せの後に行なわれた、井澤さんの情熱的な社内プレ
ゼンは無事、社内承認を得ることに成功、問題や課題を抱えつつ
も本格的に開催に向けて動き始めました。
第3回目は、「裸・展」プロジェクトがどのように進んでいった
かをご紹介いたします。
永井孝尚 <mailto:nagai@home.people.or.jp>
風の写真館 <http://www.takahisanagai.jp>
2003年3月18日掲載
■連載第3回「本邦初・裸で見る写真展「裸・展」報告
「すべてデジタルな作品制作」
「写真を楽しむ生活」読者の皆様、こんにちは。
「風の写真館」の永井孝尚です。
本連載では、本邦初の温浴施設の中での写真展、「裸・展」プロ
ジェクト参画に至った経緯をご紹介しています。連載第3回目の
今回は、11月下旬に発足した「裸・展」プロジェクトが、1月下
旬の開催までどのように進行していったのかをご紹介します。
まず、なんといっても最初の課題は、高温多湿の環境で3か月間
という長期間、写真作品が耐えられるか、というものでした。も
ちろん通常の印画紙での写真を飾る訳にもいかず、限られた条件
の中、選択肢はあまり多くありませんでした。
中には印画紙プリントを厚口ラミネート加工して密封するとか、
スライドプロジェクターで投影する、等の様々なアイディアもあ
ったものの、技術面や耐久性、予算面などで難しく、湯に浸かり
ながら多くの人が同時に鑑賞できるサイズ、尚且つ落下の危険性
がない重量、そしてなにより安全性を考慮した結果、下記の方法
になりました。
まずデータを超高画質で出力プリントし、表面のみPP加工して金
属とアクリルの混合板に張り付け防水加工するという方法で、制
作は北海道・札幌市にある広告代理店が担当されました。
私の方でホームページ作成の際に予めフィルムスキャナーで読み
取っていた写真画像ファイルをCD-Rに焼き付けて、広告代理店に
郵送、そこで特殊ラミネート紙に出力プリントをする、という手
順で作品が制作されました。また、A2サイズのアクリル混合板に
枠を5センチつけて写真をプリントし、キャプションとして白枠
の中にタイトルや撮影記録等を入れました。
しかし、舞台裏では、簡単なようで印画紙などの媒体に比べアク
リル混合版素材の粗さは手強く、数回にわたる解像度の見直しや
作品サンプルを繰り返し、ようやく高温多湿の環境に展示できる
作品が出来ました。しかし1枚を印刷するのに約1時間かかり、作
品は全部で90枚! 早めることの出来ないプリント時間にイライ
ラしながらも、現場では交代の徹夜作業が連日続いていました。
こうして札幌、入間、大和(私)の距離を超えたトライアングル
タッグにより開催準備も大詰めを迎えました
また、写真展の告知は写真展開催の2か月前に行なうことが多い
のですが、今回の開催期間は1月22日から4月14日までの12週間の
開催なので、写真展告知は写真展開催中の最初の1か月間で並行
して行うことにしました。写真展用DMも、写真展開催の時点で出
来上がるスケジュールにセットしました。
作品も順調に仕上がっている一方で、私のホームページも2002年
12月1日にリニューアルオープンしました。これで写真展とホー
ムページを連動させる土台ができました。
なお、3施設で出展するため、3つの作品シリーズが必要になりま
す。そこで、1989年の写真展「Tokyo Bay Area」と1993年の写真
展「Tokyo BayArea II」の合計80作品の中からの30作品、1998年
の写真展「風の景色」の40作品の中から30作品、及び未発表のシ
リーズ「Graceful Flowers」から30作品を出展することに致しま
した。「裸・展」で求められる作品のクオリティを満たすために
は、これらの長い時間をかけて撮影したシリーズで臨む必要があ
りました。
このようにして2002年年末と2003年年始は過ぎていきました。
第4回はいよいよ「裸・展」の様子をご報告いたします。
永井孝尚 <mailto:nagai@home.people.or.jp>
風の写真館 <http://www.takahisanagai.jp>
2003年3月26日掲載
■連載第4回 本邦初・裸で見る写真展「裸・展」報告
お風呂の写真展にみなビックリ
「写真を楽しむ生活」読者の皆様、こんにちは。
「風の写真館」の永井孝尚です。
本連載では、本邦初の温浴施設の中での写真展、「裸・展」プロ
ジェクト参画に至った経緯をご紹介しています。連載最終回の今
回は、「裸・展」の様子をご紹介致します。
1月22日、最初の打合せから2ヶ月間という非常に短かい準備期間
と前日の嵐のような慌ただしい設営を経て、湯の国ジャポン新春
企画「裸・展」は静かに開催の日を迎えました。
しかし、開催初日は事前に告知をしていなかったため、各施設を
ご利用されたお客様はお風呂に行って見るとビックリ、という状
態でした。施設によって展示個所は異なるものの、各浴槽に展示
された作品をゆったりと眺めながら、いつもとは違った感覚で入
浴を楽しんでいただいているようでした。
「裸・展」開催に併せて、コナミスポーツクラブ 入間店・川越
店・都賀店では、開催翌日から本格的に外部販促として数万部
の折り込み広告や雑誌等で私と作品の紹介を開始していただきま
した。
私も、2月の飛び石連休で、関東平野周回2泊3日の旅を敢行し、
川越店・入間店・都賀店の取材をしてまいりました。下記サイト
にアップしておりますので、ご覧下さい。
<http://www.takahisanagai.jp/photoexhibition/raten/raten-report/raten-report.html>
おかげさまで、お客様からは非常に好意的な反応をいただいてお
ります。以下はアンケートでいただいたご意見の一部です。ご意
見を下さった皆様、ありがとうございました。
・忙しい毎日がうそのような世界でした。
・感動した。癒されてボーッとした。大変ありがとう。
・お風呂の中で何もすることがないので、いろんな写真を見ながら入れてよかった。とてもいやされた。
・お風呂でリラックスタイムする時に、何回見ても心がなごむ。何気なく心の中に入ってくる。作者の訴えるものがとてもよいと思います。
・洋風風呂の白湯の前の壁に花の写真が飾ってありました。すごく心が和んでホッとしました。
・白湯の写真パネル、とてもいい案ですね。心がなごみます。でも蒸気でいたまないのですか? 是非続けてください。
・どの写真もきれいで(特に色が)、とても癒されました。自然の中にもこんなにも色々な色があることに感動した。
・とてもキレイなおフロで、ただボーッとするより、写真を見ながらボーッとする方が、脳(?)によい気がする。
・受付カウンターで裸・展の字にびっくりして、「何ですか?」と聞いてしまった。
・地球環境を考える上で、大きな意義があると思う。
・きれいな写真が多く、風呂につかっているときも気分がよかったです。
・「裸・展」というので、ヌードの展示会かと思いましたが、美しい写真なのでもっと多くのフォトを展示してほしい。もっと沢山やってもらいたい。
・街かどで「裸・展」とあったら、ちょっとためらう....又は興味シンシン、又は危なげ....。しかし、観る人が「裸」なのだと気が付いた時には、この発想の「ユニーク」さ、ネーミングのおもしろさはGood。
・白湯の壁面の花の絵写真、心が和みました。これからも少しづつ楽しみを与えてください。少しの変化でも老齢者には脳の刺激になって宜しいかも。
ところで、「裸・展」の来場者は?
今回の「裸・展」の会場となった「湯の国ジャポン」はコナミス
ポーツ株式会社が全国に展開している一部の「コナミスポーツク
ラブ」に併設されており、今回は入間店、川越店、都賀店の3施
設で開催しています。各施設、十数種類のお風呂が楽しめる本格
的温浴施設はクラブの会員様はもちろん、一般の方のご利用も可
能です。営業時間も深夜までとなり、1ヶ月当たりの総施設利用
者は3施設で数万人にも上る人気施設です。通常の都内の写真展
ギャラリーでは来場者が10,000人を超えることはなかなかなく、
1,000人以下のものも多いのが現状です。
温浴施設内での写真展は、必ずしもお客様全員が写真を楽しむ目
的で来ている訳ではないので、単純に人数だけでの比較は出来な
いのですが、写真家としてこのような集客力のある場で写真を発
表できるという事は大きなメリットです。また、お客様にお風呂
でのんびりとリラックスしながら見ていただけるのもメリットと
言えます。
今後、作品の新しい発表の場として、「裸・展」のような企画が
増えていくとよいなぁ、と思っています。
なお、「裸・展」は4月14日(月)まで開催しています。
コナミスポーツクラブ 入間店、川越店、都賀店では、第4回「裸
・展」へ向けて、写真、絵画、書道等、幅広く出展作品を募集し
ております。ご希望される方は、下記宛お問合せください。
<mailto:iruma@konamisports.com>
では、またどこかでお会いできる日を楽しみにしております。
永井孝尚 <mailto:nagai@home.people.or.jp>
風の写真館 <http://www.takahisanagai.jp>
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