私のお気に入り: 『あなたの写真を拝見します』 安友志乃

写真のあり方について、様々な気付きを与えてくれる本です。本文の中からいくつかご紹介させていただきます。

『けれども、撮るために見るということは、その「かたち」を見ることではなく「かたち」の奥にある概念を見ることなのである。』(p.85)
→以前より、写真というメディアを介して自分の中の真実を写し取るのが写真の本質と考えておりましたので、この部分はとても共感できました。


『一つには(絵画等で)描くほうが主題はより直接的に表現できるということ。もう一つは、写すという行為で主題を表現するのであれば、背景や機材という主題以外のある種「条件」が必要になる、ということ』(p.96)
→表現手段として自分の表現意図を忠実に再現してくれる機材が必要な点が、写真と他の芸術的表現手段の大きな差です。案外と、この辺りが写真の機材・技術中心主義の出発点なのでしょうね。この観点では、写真は楽器を必要とする音楽の世界(特に即興性を求められるジャズ)と似ているかもしれません。


『「私にしかできない写真」という心地よい錯覚と自己陶酔は、その人間のアイデンティティを代替わりする役にまで高められている。自己のない人間にとって技術は、自負と自尊心という安手のアイデンティティを与えてくれるのである』(p.102−103)
→まさに、写真による安易な自己表現が、単なる自己満足に終わってしまう危険性を喝破しています。


著者の安友さんの仕事は写真の講評で、仕事柄多くの写真作品に接してきました。

インターネット上の様々な書評を見ると、安友さんの著書に対しては批判も多いようですが、私自身は「そうなんだよなぁ」と共感するところ大でした。

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