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■■■■『プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーへ!』■■■■
「写真がライフワーク」と考える写真家のためのメルマガ
                     http://www.takahisanagai.jp
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■■■今回のポイント■■■
第七の心得、「そして何よりも、写真を楽しむ」。
今回は、戦後の混乱期に歯科医を開業する傍ら、「色の魔術師」と
絶賛された写真家をご紹介します。

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≫≫本メルマガについて≪≪≪

 本メルマガは、「ライフワークは写真」と考える方々に、
 プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーという生き方
 を提案します。

 7つの心得を順番に紹介しています。(詳しくは下記参照)
http://www.takahisanagai.jp/photoexhibition/psp/psp-backnumber.html

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第046号:2005/08/21
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■■■目次■■■
【前号のポイント】
【第七の心得:写真を楽しむ 3】
【あなたの声を聞かせてください】
【『風の写真館コレクション』より】
【あとがき】


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【前号のポイント】
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●「心から楽しむ」とはどういうことか、事例で考えてみましょう。

●最近、コンピュータの世界で大きな革命を起こしている、「リナ
ックス」というソフトウェアがあります。

●通常、このようなソフトウェアは、大企業が、多くの開発者を動
員し、莫大な開発費を投資して開発しています。

●一方リナックスは、企業ではなくボランタリーの人達が集まって
開発しています。ボランタリーによる開発ですが、信頼性・性能と
もに高く評価され、世の中へ急速に普及しています。

●かたや、大企業が巨額の投資を行い開発。
かたや、ボランタリーの個人が集まって無償の行為により開発。

●前者を職業的プロフェッショナル・フォトグラファーに例えると、
後者をプロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーに例える
ことが出来そうです。

●リナックスは、リーナス・トーバルズが学生の時に自分で作った
ソフトをインターネットのニュースグループ上で公開したことから
始まりました。

●これに世界中の有能なプログラマーが集まり、瞬く間に強力なソ
フトウェアに育て上げていきました。

●リーナスは、何故リナックスが成長したのかについて以下のよう
に語っています。

 リナックス・コミュニティのメンバーは、最も美しく最高のテク
 ノロジーを作り上げる全地球規模の共同作業の一翼を担っている
 ことを愛している。(リナックスは世界一の規模を誇る共同作業
 だ) それだけのことだ。そして、それが楽しいのだ。

●楽しいこと。これがリナックスがコンピュータの世界に革命を起
こした原動力です。彼やコミュニティ・メンバーにとってのリナッ
クスは、金銭的報酬ではなく、最高の楽しみを与えてくれることに
意味があるのでしょう。

ということでした。

下記で前号について詳しくご覧いただけます。
http://www.takahisanagai.jp/photoexhibition/psp/psp45.html

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【第七の心得:写真を楽しむ 3】
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前回は、第七の心得の事例としてリナックスの事例をご紹介しまし
た。

今回は、写真家の事例をご紹介します。

私は、「プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーを一人
選びなさい」と言われたら、迷わずに緑川洋一氏を挙げます。

緑川洋一氏は1915年に岡山県生まれで、本業は歯科医です。
元々、模型に興味を持っていて、戦前に模型の記録を残すために写
真を始められました。その後、徐々に写真の方に移行していきます。

日本大学歯科医学校を卒業、東京で病院に勤務された後、地元の岡
山に帰り、歯科医院を開業します。

この辺りから、普段は歯科医の仕事をし、週末は写真に没頭する、
という生活が始まりました。その後、写真コンテストに応募して賞
を取り、名声を得ていくうちに、写真にのめり込んでいきます。

中国地方の写真家コミュニティで、鳥取砂丘の作品で世界的に著名
な写真家・植田正治氏と知り合いになり、親交を深めていきます。
また、二期会の前身の「銀龍会」に入会し、林忠彦氏、秋山庄太郎
氏、石津良介氏とも知り合いになり、視野を広げていきます。

その後、瀬戸内海の風景を今まで誰も試したことのない様々な手法
で表現し、発表していきます。

例えば夜の潮の急流を長時間露光で雲海のように表現したり、同様
の手法で、夜のつり船の光跡を造形美として表現します。

カラー写真の出現と同時期に表現手段をカラーに移行していきます。

「瀬戸内海のピカピカしたきれいな海を色彩豊かに表現してみたい」

と決心し、試行錯誤を繰り返しながら撮っていった瀬戸内海の写真
は素晴らしい色彩で表現されています。「色の魔術師」と絶賛され、
勲四等瑞宝章受賞も受賞されます。

下記の富士フィルムのサイトで、緑川洋一氏の作品とインタビュー
をご覧いただけます。

http://www.fujifilm.co.jp/photographer/2001_01midorikawa/index.html

上記サイトのインタビューの中から、私が好きな、緑川洋一氏の言葉
を選んでみました。

》 『林忠彦は日本の最高の頭脳といわれる人たちを写し、それを後
》 生に残したわけですけど、よく私は林くんに「おまえさんは人間
》 を写してくれ、俺は日本の自然を写すよ」って言っていたもんで
》 す。これが、私が日本列島を写す、根本的な理由の一つになった
》 わけです。林くんは人物を撮り、私は自然を撮っているわけだけ
》 ど、その両方を合わせると「現代」というものが後世に残るんじ
》 ゃないかと思います。写真は今現在という時点だけしか写りませ
》 んが、月日が経てば、必ず歴史のひとこまになるんです。写真に
》 はそういう良いところがあるんですよ。』

「現代」というものを林忠彦氏と二人で分担して遺していこう、とい
うのは非常にスケールの大きな考え方ですね。

写真の記録性も重要な指摘と思います。

最近、私は80年代後半から撮影し続けてきた東京湾岸の写真を整
理しています。

当時は何も考えずに夢中で撮影していたのですが、この中には、ま
だ繋がっていない横浜ベイブリッジや、レインボー・ブリッジ、周
囲に何も建っていない建設中のランドマークタワー、等、実はその
当時しか撮影できなかった貴重な被写体が多く含まれています。

ここ数年撮影した作品の中には、横浜赤レンガ倉庫、お台場フジテ
レビ社屋、海ほたる等がありますが、これらも将来は撮影できない
被写体になっていくことでしょう。

これは「記録性」を持つ写真ならではの良いところだと思います。


》 『今現在、宇宙空間にあるものを記録して、それを自分自身で楽
》 しみ、そして多くの人に楽しんでもらう、それが写真の楽しみじ
》 ゃないでしょうか?まずいちばんに、自分自身が楽しむことです。
》 昔、林忠彦くんが、「おまえさんはいいな。自分の好きなものだ
》 け写しておけばいいんだから。俺たちプロはイヤな仕事でも注文
》 が来れば撮らなきゃいけない」ってよく言っていました。私は歯
》 科医をやりながら日本中を駆け巡り、写真を撮り続けましたが、
》 もしかすると写真を撮るために歯医者さんを一生懸命やったのか
》 もしれませんよね(笑)。』

ここは、まさにこのメルマガでご紹介してきた「プロフェッショナ
ル・サンデー・フォトグラファー」の考え方そのものです。

この「第七つの心得」で述べている通り、緑川洋一氏もまず「自分
自身で楽しむ」ことを挙げられています。

これに加えて、歯医者の仕事も一生懸命やったことも重要だと思い
ます。

つまり、本業でもプロフェッショナルとして社会的な責任を果たせ
ない限り、写真でもプロフェッショナルとして作品は残せない、と
いうことです。

「本業でもプロフェッショナル」という点は、実は「七つの心得」
に八つ目の心得として加えてもよいかもしれません。


》 『完全に趣味の助長という環境で写真をやり続けたという意味で
》 は、私は日本的にも珍しい存在かもしれません。植田くんなんか
》 も「俺はいつまでたってもアマチュアだよ」って言ってましたが、
》 私も好きな写真だけを一生撮り続けることができ、本当にありが
》 たいことだと思っています。家族のものもみんな、イヤな顔もせ
》 ず、ありがたいことだと感謝しています。今後は、私の持ち時間
》 が少なくなったから、できるかどうかわかりませんが、最後に、
》 新しいテーマのものを何か一つ写しておきたいと思っているんで
》 すね。私の今まで培った感覚やテクニックを総動員しまして....
》 ..模索中ですけど(笑)。まだまだ、命ある限り、写し続けるつも
》 りです。』


戦後まもない大変な時期に、歯科医として仕事を始める一方で、趣味
の延長で素晴らしい作品を残された緑川洋一氏の偉業は、写真界で特
質すべきものですし、生き方そのものも極めて先駆的だったと思いま
す。

戦後は、「生きることそのもの」が課題でした。
現代は、「いかに生きるか」が課題と言われています。

好きなことを夢中でやる。

仕事か趣味かに関わらず、しっかりした志を持ちつつ、ライフワーク
として取り組む。

この結果が作品に残る。

現代こそ、緑川洋一氏のようなプロフェッショナル・サンデー・フォ
トグラファー的な生き方が我々に求められているのかもしれません。


*********

さて、以前もお知らせしました通り、「第七の心得」を以って、本メ
ルマガは一旦一区切りとなります。

現時点では次号以降のスケジュールは下記のように考えています。
(但し、変更の可能性もあります)

 第47号:9月4日(日)配信
  第七の心得、最終章

 第48号:9月18日(日)配信
  第七の心得のまとめ

 第49号:10月2日(日)配信
  全体の心得まとめ(1):第一の心得から第四の心得まで

 第50号:10月16日(日)配信
  全体の心得まとめ(2):第五の心得から第七の心得まで

 第51号:10月30日(日)配信
  今後のプロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーの姿

第52号以降のことは未定ですが、当面は不定期で写真に関するメ
ッセージを配信させていただこうと思っております。

よろしければ、引き続きお付き合いをいただければ幸いです。

よろしくお願いいたします。

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【あなたの声を聞かせてください】
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あなたのご意見・ご質問・ご要望を聞かせてください。

mailto:news@takahisanagai.jp

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【『風の写真館コレクション』より】
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今回は、「風の景色」シリーズから"Farukolufushi, Maldives,
1987"です。

初めてモルディブに旅行した時の作品です。赤道直下のモルディブ
は、太陽が真上にあって日差しも日本では体験できない強いもので
すが、夕刻には涼しく過ごしやすくなります。
この作品は、そのような夕刻に撮影したものです。定番の椰子の木
と夕景もいいものですネ

http://www.takahisanagai.jp/collection/News/collection-041.html

『風の写真館コレクション』への登録は下記でどうぞ。
http://www.takahisanagai.jp/collection/collection.html

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【あとがき】
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お盆休みの間は、花の写真を撮って過ごしました。

ここ10年ほど使っているソフト・フォーカス・レンズをデジタル
一眼カメラで使用しました。

撮影した結果をすぐにパソコンで大きく表示し、再度撮影する、と
いうプロセスを通じて、10年間使用してきたこのソフト・フォー
カス・レンズの特性を改めて把握することができました。

花に直射日光が当っている状態よりも、明るい薄曇の条件で撮影す
る方が、花の輪郭が美しくボケるようです。

今までは、撮影してからフィルム現像が上がってくるまで最短1日、
場合によっては数週間必要なので、この間に撮影した時の印象が薄
れてしまい、このような「学び」が出来ていませんでした。

言うまでもなく撮影直後に結果を確認できるのはデジカメの利点で
すが、このように機材のクセをより深く把握する上でも有効だと認
識した次第です。

では、また。

                          永井孝尚

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発行人:永井孝尚 mailto:mail@takahisanagai.jp

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