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■■■■『プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーへ!』■■■■
「写真がライフワーク」と考える写真家のためのメルマガ
                     <http://www.takahisanagai.jp>
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 「プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファー」とは、本
 業を離れて一人のプロフェッショナルとして写真作品を撮り続け
 る写真家のことで、私の造語です。

 写真を本業にしていないからこそ、アート的プロフェッショナル
 ・フォトグラファーとして、一つのテーマを長いスタンスで追い
 続ける人達です。

 本メルマガは、「ライフワークは写真」と考える全ての方々に、
 プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーという生き方
 を提案します。

 全部で7つある心得を紹介しています。現在は第四の心得。
 詳しくは下記を参照下さい。

<http://www.takahisanagai.jp/photoexhibition/psp/psp-backnumber.html>

 私も個展を中心に写真活動を続けています。
 写真のサイトもYahoo!のCoolサイトに登録いただきました。

 皆様と一緒に、プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファ
 ーの生き方を考えていければ、と考えております。
 よろしくお願いいたします。

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■■■今回のポイント■■■
写真の技術は、一般に「ピントはカチッ、構図はピタッ、露出はシ
ャッキッ、シャッターチャンスはバッチリ」と合わせること、と考
えられることが多いのですが、これだけでは、必ずしも自分の撮り
たい写真は撮れません。

さらに、技術をプロセスの観点で考える必要があります。
その辺りを考えてみましょう。

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第023号:2004/08/28
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■■■目次■■■
【前号のポイント】
【第四の心得:技術は大切だが全てではない その3 新・写真技術論1】
【読者からの質問】
【あなたの声を聞かせてください】
【私のお気に入り】
【『風の写真館コレクション』より】
【あとがき】

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【前号のポイント】
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●「写真はパッション・衝動だ」とよく言われます。

●さらに進んで、「写真に技術は必要ないんだ。必要なのはパッシ
ョンだけだ」と極論する考え方もあります。本当にパッションだけ
で技術は不要なのでしょうか?

●強烈な個性を持つプロフェッショナルフォトグラファーの中でも、
森山大道氏は、とりわけ強い個性を放っておられます。

●写真集「写真よさようなら」はハイコントラスト・素粒子・ゴミ
だらけ。作品によってはフィルムに傷も。にも関わらず、強烈なメ
ッセージを放っています。(下記でご覧になれます)

<http://www.moriyamadaido.com/gallery/index.html>

●一見、このような写真はパッションがあれば誰にも撮影できるよ
うに思えます。事実、20年前はそのように考えるアマチュア写真
家も多くいました。しかし、それは大きな落とし穴です。

●実際には、森山氏自身の中の激しい葛藤の結果が、作品に結晶さ
れています。それは写真集冒頭からも読み取ることができます。

●写真集『にっぽん劇場写真帖』(1968年発刊)では、
 「当時、(中略)僕はいつも得体の知れないイライラやモヤモヤ
 を沢山抱え込んでいた。そうした、写真を撮ることから生じるス
 トレスや、僕の日常生活そのもののなかにひそむ不安感の一切を、
 この本をつくるにさいして全てぶちこみたいという思いだったは
 ずだ。写真にテーマなんていらない、写真なんて美しくなくても
 いい、僕の眼に写り、身体が感応し、心に突き刺さってくるもの
 はことごとく対象であり等質なのだ、という過剰な気負いの中で
 一気に編集した覚えがある。」

●また、写真集『写真よさようなら』(1972年発刊)では、
 「この本を作ったころのぼくは、自分の写真もふくめて全ての写
 真に対して懐疑的になっていた。ちょうど写真同人誌<PROV
 −OKE>が解散した直後のことで、ぼくは持っていき場のない
 気持ちをもてあましていたような気がする。写真の解体・写真の
 無化・などという言葉がしきりに脳のなかに去来し、写真を一度、
 果ての果てまで連れていってしまいたいという衝動にかられてい
 た。つまり、従来の、美意識・意味といった、疑うことのない一
 定の世界観によって成立していた写真との訣別!というわけであ
 った。現在(いま)、思い返してみると、当時のぼくが、矛盾や
 短絡だらけだったにせよ、いかに過剰であったことよと懐かしく
 なる。(後略)」

●..と述べています。このような葛藤の末に生み出された作品と、
うわべだけの模倣作品との間に大きな隔たりがあることは言うまで
もないでしょう。

●まさに氏の作品は、葛藤の末に、前回述べた「自分の衝動を的確
に表現するためのプロセス」である「技術」を確立し、生み出され
たもの。その意味では、非常に高度な技術の集大成です。

●それでは、写真における技術はどのように深めていけばよいので
しょうか?

ということでした。

下記で前号について詳しくご覧いただけます。
<http://www.takahisanagai.jp/photoexhibition/psp/psp22.html>

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【第四の心得:技術は大切だが全てではない その3 新・写真技術論1】
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今まで述べてきましたように、写真における技術とは、自分の衝動
を的確に表現するために確立したプロセス全体を指します。

技術をこのように捉える考え方は、あまり例がないかもしれません
ね。

でも、我ながら分かりにくい説明だと思いますので、具体的に見て
みましょう。

一般的は、写真の技術というと、

 カチっとピントを合わせて、
 ピタっと構図を決めて、
 シャッキっと露出が合っていて、
 シャッターチャンスもバッチリ。

と考られると思います。

確かに、このような「ハードウェア的」な技術も非常に重要です。
実際、世の中の多くの写真展では、このような技術が全く出来てい
ないのに展示されている作品が、非常に多く見られます。

写真展では作品は大きく伸ばされますので、キャビネ判等では目立
たなかったピンボケやブレ、デジカメの高感度撮影による色のザラ
つき等はテキメンに分ってしまいます。

本来、写真はワンショット勝負、ノートリミングかつ補正なしでそ
のままプリントすれば出来上がり、というのが理想です。
撮影後に色々と作業が必要になるのは、先に挙げたハードウェア的
技術が不足していることの裏返しでもあります。

また、プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーは、画面
上に写っているものには、隅から隅まで全てに責任を持っています。

「端にこんなのが写っていた。でも端っこだから、まぁ、いいか」
とか、

「ちょっと露出が暗いなぁ。でも表情が出ているし、まぁ、いいか」
とか、

「折角ドンピシャのシャッターチャンスなのに、ピントが合ってい
ないなぁ。でもこんな写真、二度と撮れないから、まぁ、いいか」

ということは、普通のアマチュアなら許されるでしょう。

また職業的写真家であれば、納得できない出来であってもクライア
ントが納得するのであれば、仮に自分は不本意であっても、それら
の出来でよしとする場合もあるでしょう。

しかし、プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーであれ
ば、少しでも満足できなければ、再度撮影し直すか、その作品をボ
ツにすべきです。

一方で、このようなハードウェア的技術だけを追っても、必ずしも
深みある作品が生まれるとは限りません。

第三の心得「機材に拘るが溺れない」では、機材は手段であって目
的ではないと申し上げました。

実はハードウェア的技術でも、全く同じことが言えます。
ハードウェア的技術も手段であって、目的ではないのです。

何故かというと、ハードウェア的技術である露出・ピント・構図・
シャッターチャンスがたとえ完璧でも、出来上がった写真で自分の
衝動が十分に表現できていなければ、それは単なる自己満足に過ぎ
ないからです。

何故なら、「衝動の表現」という目的を達成していないからです。

ハードウェア的技術も重要ですが、より重要なのは自分の表現意図
を忠実に表現できるかどうか、なのです。

前々回、よい写真が撮れた場合、偶然に任せるのがアマチュア、必
然的に撮れるのがプロフェッショナル・サンデー・フォトグラファ
ー、と述べました。

必然的によい写真を撮るための技術。

それは、ハードウェア的技術を必修科目として身に着けた上で、撮
影の前の構想力・調査力・企画力、撮影時の集中力、撮影後の反省
力全体を包含した、ソフトウェア的技術です。

ハードウェア的技術に加え、このようなソフトウェア的技術も含ん
で全体を包含したものが、「自分の衝動を的確に表現するために確
立したプロセス」としての技術です。

このようなソフトウェア的技術を身につけるためには何が必要なの
でしょうか?

次回はこの点から考えてみたいと思います。


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【あなたの声を聞かせてください】
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本メルマガは、読者の皆様と一緒に作っていきたいと思います。
是非あなたのご意見・ご質問・ご要望を聞かせてください。

<http://www.formman.com/form.cgi?gOifBUg2nMuZ8wtt>

また、掲示板も開設しています。
おかげさまで、少しずつ書込みも増えてきました。

<http://takahisanagai.jp/cgi-def/admin/C-002/bb/visit/main.pl>

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【私のお気に入り】
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私のお気に入りの写真集や書籍をご紹介します。

■■ 『不肖宮嶋、死んでもカメラを離しません』 宮嶋茂樹 ■■

真の職業的プロフェッショナルフォトグラファーの凄みを知りたけ
れば、真っ先にこの本をお勧めします。

宮嶋さんの軽妙な文章からは、様々な修羅場をくぐり抜けながら現
場で命をかけて撮り続けてきた写真家の深い覚悟を読み取ることが
出来ます。

たかが一枚の写真、されど一枚の写真。

たった一枚の写真を撮るために、職業的プロフェッショナルフォト
グラファーは不眠不休で何日も張り込みを行い、知恵(悪知恵?)
を巡らせ、法律に触れない範囲でありとあらゆる手段を用い、肉体
を酷使しつつ、驚異的な集中力でコンマ数秒のわずかなシャッター
チャンスをモノにします。

「やはり、真のプロフェッショナル・フォトグラファーは凄い」と
誰でも思われるのではないでしょうか?

麻原彰晃(松本智津夫)の拘置所の写真等、様々なスクープ写真と
合わせて、それらを撮影するに至った裏話満載です。

詳しくは下記をご覧下さい。

<http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4396312075/wps-22>


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【『風の写真館コレクション』より】
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今回は、「風の景色」シリーズから「Santa Cruz, CA, USA, 1994」
です。

10年前、遅い夏休みにをとって、2週間米国南西部の撮影旅行に
出かけました。米国に到着した当日、時差ぼけに悩まされながら、
サンプランシスコから海岸線の道路を南下していると、午後の陽の
光に照らされた海の上をウンドサーフィンが行き交っていました。

光る海の上に現れた光景の美しさは忘れられません。

こちらでご覧いただけます。
<http://www.takahisanagai.jp/collection/News/collection-018.html>

『風の写真館コレクション』への登録は下記でどうぞ。
<http://www.takahisanagai.jp/collection/collection.html>

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【あとがき】
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オリンピックの真っ最中ですが、今回のオリンピックで私が最も感
銘した写真は、日本経済新聞8月23日夕刊に掲載された女子マラ
ソンで優勝した野口みずき選手のゴールの瞬間を捉えた写真です。
(APが撮影)

ゴールテープの間近で、ローアングルで広角系レンズを使い、左手
の人差し指を高々と掲げた躍動感あふれるゴールインの瞬間が、見
事に捉えられていました。

もしまだご覧になっていない方は、是非日経夕刊を探してチェック
してみてください。

このような瞬間を撮影できることは、写真家冥利に尽きますね。

今までマラソンのゴールはゴールテープの真正面から望遠で狙うケ
ースが多かったように思います。想像ですが、恐らくこのように撮
影する方が確実にゴールの写真を押さえられるからではないでしょ
うか?

今回の写真をモノにするために、このカメラマンはどれだけの想像
力と企画力を持って準備を進めたのでしょうか?

ところで翌日、テレビスタジオでインタビューを受ける野口選手は
身長150cmと小柄な普通の女性で、ゴール瞬間の躍動感とオー
ラあふれる姿とは大きなギャップを感じました。

もしかしたら、インタビューの際、身長187cm・97Kgの室
伏選手が隣にいたためかもしれませんネ。

では、また。
                          永井孝尚

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発行人:永井孝尚 <mailto:mail@takahisanagai.jp>

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Copyright(C), 2004 永井孝尚


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