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■■■■『プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーへ!』■■■■
「写真がライフワーク」と考える写真家のためのメルマガ
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 「プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファー」とは、
 一人のプロフェッショナルとして写真作品を撮り続けるアマチ
 ュア写真家のこと。私の造語です。

 写真を本業にしていないからこそ、アート的プロフェッショナ
 ル・フォトグラファーとして、一つのテーマを長いスタンスで
 追い続ける人達です。

 本メルマガは、「ライフワークは写真」と考える全ての方々に、
 プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーという生き方
 を提案いたします。

 私も個展を中心に写真活動を続けています。
 写真のサイトもYahoo!のCoolサイトに登録いただきました。

 皆様と一緒に、プロフェッショナル・サンデー・フォトグラフ
 ァーの生き方を考えていければ、と考えております。
 よろしくお願いいたします。

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■■■今回のポイント■■■
もしフォトグラファーを目指すのであれば、写真の手段と目的を常
に意識することが重要です。

でも、結構自分では気が付かないことも多いのです。

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第017号:2004/06/05
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■■■目次■■■
【前号のポイント】
【第三の心得:フォトグラファーとカメラマニア】
【ご感想のメールをいただきました】
【あなたの声を聞かせてください】
【『風の写真館コレクション』より】
【あとがき】

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【前号のポイント】

●第三の心得は、「最高の作品を作る道具として撮影機材には拘る。
しかし機材には溺れない」です。

●カメラは写真を撮るための道具であることは言うまでもありませ
ん。しかし、実態はちょっと違うのではないか、とも思います。

●例えば、作品を撮らないカメラ。ライカというドイツ製のカメラ
があります。私も10年以上前に中古でライカM2というカメラを
買い、ハマってしまいました。まさに持っているだけで充実感があ
りました。

●しかし、実際にこのカメラで作品が撮れたか、というと、私の場
合は全く撮れませんでした。何故か作品を撮ろうという気にならな
いのです。多分に相性の問題なのかもしれません。

●カメラには愛玩物の面もあるのかもしれません。ちょうど、車に
凝ったり、あるいは女性がバッグにハマるのと同じかもしれません。

●もう一つの例は、機材偏向・技術至上主義です。写真展等を行う
と、機材や撮影方法、現像方法等の質問を多くいただきます。
絵画等の世界では、このような質問はあまりないように思います。
むしろ、作品自体の中身を見られるのではないでしょうか?

●「いかに撮るか?」から脱皮する必要があるのではないでしょう
か?

●世界で最初の写真が発表されたのは1839年。写真は人類にと
って非常に新しい表現形態です。

●その約100年後の20世紀前半、フランスで写真表現に革命を
起こしたマン・レイは、「何を撮るべきか」ではなく「いかに撮る
べきか」を考えている写真家が多いと延べ、「写真は最初のうちは
技術に過ぎないが、やがては本物の芸術になっていく」と洞察しま
した。

●さらに半世紀以上が経ちました。

●半世紀以上前のマン・レイの主張が、実は第三の心得である「最
高の作品を作る道具として撮影機材には拘る。しかし、機材には溺
れない」のテーマです。

●自分の衝動を表現するためには、「いかに撮るべきか」も確かに
大切ですが、何よりも大切なのは「何を撮るべきなのか」です。本
メルマガで第一・第二の心得を先に述べたのも、そのためです。

●では、写真家は、機材について具体的にはどのように考えていけ
ばよいのでしょうか?

ということでした。

下記で前号について詳しくご覧いただけます。
<http://www.takahisanagai.jp/photoexhibition/psp/psp16.html>


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【第三の心得:フォトグラファーとカメラマニア】

前回、「何を撮るべきか」ではなく「いかに撮るべきか」を考える
写真家が多いと述べました。

何故そのようなことが起こるのでしょうか?

表現手段という観点で見ると、絵画と写真では、決定的に異なる点
があります。

絵画の場合、筆一本と紙があれば絵を描くことができます。

一方、絵画とは異なり写真の場合は、表現手段として自分の表現意
図を忠実に再現してくれる写真機材は必須です。

機材の選択基準は、その機材で自分の表現意図を忠実に再現できる
かどうか、ということです。 自分の表現意図を再現できるのであ
れば、それこそレンズ付フィルムでも問題はありません。

また、絵筆では自分で工夫する余地が非常に大ですが、写真では、
基本的に撮影時に自分の思う通りに表現できたかどうかが全てです。

撮影後に現像や焼付けで若干の修正が可能ですが、範囲は限られて
います。最近のデジタルの場合では、レタッチング等で修正可能な
範囲が広がっていますが、それでも絵画と比べると自由度は非常に
低くなります。

つまり、写真は表現上の工夫の制約が多い表現形態と言えます。
近年は技術の発達で誰でも撮れるようになった反面、撮影者の心が
的確に現れ、奥が深い表現形態でもあります。

自分の表現意図を忠実に再現するために機材や技術に拘るのは、表
現上の制約が非常に大きい写真という表現形態の性質上、仕方がな
いことであると思います。

ただ、ここで重要なのは、
 手段(=「いかに撮るべきか」) と
 目的(=「何を撮るべきか」)
を混同しないことです。

本来、機材は目的(「これを表現したい」という衝動)を達成する
ための手段なのであり、機材という手段そのものが目的なのではあ
りません。

写真の場合、道具として魅力的なカメラが世の中に数多くあり、カ
メラを所有するだけで満足感を感じたり、性能の高いレンズで被写
体をシャープに写すことそのものに価値を見出すこともあるかもし
れません。

そのこと自体は各人の価値観の問題なので、是非を問うべきではな
いと思います。

しかし、本来の写真の目的は「何を撮るべきか」であることは常に
頭の片隅に置いておきたいものです。



ここで、一つ簡単なテストを考えてみましょう。
あなたは次のうちのどちらでしょうか?

「フォトグラファー」
フォトグラファーは、カメラを自己表現を達成するための手段・道
具・消耗品と考えています。(もちろん、プロフェッショナルの道
具として、愛着を持って大切に使用します)

「カメラマニア」
カメラマニアは、カメラを使って撮影するプロセス自体を楽しんで
います。必ずしも自分の撮りたい写真のイメージは持っている訳で
はありませんが、カメラを持ち歩いて写真を撮ること自体に幸せを
感じます。カメラはペットやアクセサリーと同じ位置付けの愛玩物
です。



実際、世の中には所有すること自体を目的としてカメラを買う人も
います。凄い人になると、新品のライカを購入し、元箱の封を切ら
ずに持ち続けていたりします。

また、カメラのメカニカル感が好きで「愛(め)でる」ことを目的
にカメラを持つ人もいます。

真っ先に最新機種を購入することに全力を挙げる「人柱」的な人も
いたりします。

私も実際にそのようなこともやってきましたので、この人達の気持
ちが非常によく分かります。

ただ、考えてみれば、このようなことって、他の表現形態ではあま
り考えられないですよね。

例えば、音楽をやっている人が最新の楽器を速攻で購入したり、
絵を描く人が絵筆の元箱の封を切らずに保管したり、というケース
はあまりないのではないでしょうか?(実は、あったりするかもし
れませんので、その時はお教えくださいネ)

ここまでは、「機材に拘る」という影の部分をお話してきましたが、
機材に拘ることは必ずしも悪いことではありません。

むしろ、自分が「何を撮りたいのか?」が明確になっていて、それ
を写真として残すために必要なのであれば、徹底的に機材に拘るべ
きです。

それが、第三の心得である、

 「最高の作品を作る道具として撮影機材には拘る。しかし機材に
 は溺れない」

です。

さて、カメラマニアとしてではなく、フォトグラファーとして機材
に拘るには、どのように考えていけばよいのでしょうか?

次回はその辺りから始めていきたいと思います。

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【ご感想のメールをいただきました】

読者の方からメールをいただきましたので、ご紹介します。

≫永井さま
≫こんばんわ始めまして写真家のtakumiu(26歳)と申します。
≫いつも【プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーへ
≫!】を楽しく購読させていただいております。

≫今回の「最高の作品を作る道具として撮影機材には拘る。しかし
≫機材には溺れない」はとても共感できる部分があったのと、いつ
≫も内容がとてもつぼをつく面白い話なのでこの返信メールをお礼
≫にさせていただきたいと思いました。

≫さて、私自身写真家として活動を始めたのもつい最近ですが、最
≫近ある場所を借りて作品展示を行ったところやはり感想が帰って
≫くる前に聞かれるのは「カメラはなんですか?」「フィルムは何
≫ですか?」「これどうやってプリントしたんですか?」などでし
≫た。しかもそのほとんどが写真をとる同世代の若者ばかり。
≫なんだかがっくりきてしまいました、どうしてそんな写真の一番
≫つまらないところから始めて会うこの人との会話を始めなければ
≫いけないのかなあと思います。

≫どうせなら聞かれるなら「あなたにとって写真ってなんですか?」
≫とか「この作品であなたは何がいいたいんですか?」と聞かれた
≫いです。カメラがどうだのなんて話はカッコ悪くてできません、
≫すくなくても僕には。

≫おそらく多くの人が写真の芸術性をカメラやフィルムそしてプリ
≫ントの技術に置き換えてしまっている、ともいえば構図だのライ
≫ティングがうまいだのって話でもないですが...

≫そもそもカメラは自者であれ他者であれなにかを伝えるための道
≫具だと僕は思いたいです。

takumiuさん、
ご感想をお送りいただき、どうもありがとうございました。

いつも、「今回のメルマガはどうかなぁ」、と思いながらお送りし
ていますので、大変励まされました。

takumiuさんのおっしゃる点、私も全く同感です。
本来作品は、自分の中に蓄積した衝動を表現することで生まれるも
のなのに、このプロセスを省略して手っ取り早く作品を生み出すた
めのノウハウを求めているのかもしれませんね。

これからもよろしくお願いいたします。

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【あなたの声を聞かせてください】

本メルマガは、読者の皆様と一緒に作っていきたいと思います。
是非あなたのご意見・ご質問・ご要望を聞かせてください。

<http://www.formman.com/form.cgi?gOifBUg2nMuZ8wtt>

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【『風の写真館コレクション』より】

今回は、Tokyo Bay Areaシリーズから、「東京湾上の貨物船 - 大
黒埠頭、1991」です。

日没後も暑さが残る夏の青い夕暮れが、群青色の夜に変わろうとす
る中、東京湾上で貨物船が静かに入港を待っていました。

こちらでご覧いただけます。
<http://www.takahisanagai.jp/collection/News/collection-012.html>

『風の写真館コレクション』への登録は下記でどうぞ。
<http://www.takahisanagai.jp/collection/collection.html>

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【あとがき】

「弘法は筆を選ばず」

という言葉があります。

実は、第三の心得として、機材をテーマにしたのは、この言葉の意
味を考え始めたことがきっかけでした。

他にも、機材と表現について考えさせられる事例は多くあります。
例えば、ピアニストの多くはスタインウェイというピアノを好みま
すが、巨匠リヒテルはヤマハを好んで使いました。

次回はそのような事例を題材にして、機材について考えていきたい
と思います、

では、また。

                          永井孝尚

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発行人:永井孝尚 <mailto:mail@takahisanagai.jp>

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