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「写真がライフワーク」と考える写真家のためのメルマガ
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■■■今週のポイント■■■
具体的なテーマを決めることは難しい作業で近道はありません。
今回は、「言語化」という手法について考えてみましょう。

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第011号:2004/04/04
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■■■目次■■■
【あなたの声を聞かせてください】
【前号のポイント】
【第二の心得:自分だけのテーマ その4 言語化について】
【『風の写真館コレクション』、登録受付中】
【あとがき】

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【あなたの声を聞かせてください】

本メルマガは、読者の皆様と一緒に作っていきたいと思います。
是非あなたのご意見・ご質問・ご要望を聞かせてください。
(記入は1−2分程度です)

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【前号のポイント】

●手元に自分の写真作品がなくても、プロフェッショナル・サンデ
ー・フォトグラファーが写真について表現豊かに語ることが出来る
のは、自分が深い感動を持ったテーマを徹底して撮り込んでいるか
らです。

●では、自分が感動したもの・好きなものを撮っていれば、それで
よいのか、というと、必ずしもそうではありません。

●何故なら、多くのアマチュア写真家が好きなものを単に数多く撮
り続けているだけで、骨太なテーマを持っていないからです。

●戦場写真家・ナクトウェイは、自身のテーマについて以下のよう
に語っています。
(<http://www.mediasuits.co.jp/senjo/>から引用)

 「1つのテーマを決めて撮っている。一般に何でも撮るという写
 真家になることには興味がない。目的を持った写真家になりたい
 と思っている。人々に感心を持ってもらいたい事をテーマにして
 いる。何らかの戦いがあるもの、我々の人生にとって最も基本的
 なことと戦っているものを対象に撮っている。日ごろ当然と考え
 ていること、例えば食べ物であるとか市民としての権利を勝ち取
 る為に戦っている人に焦点をあてて撮っている。そういったテー
 マを扱うことによって、写真家として、社会的な価値がある仕事
 が出来ると考えている。」

●この思想には、彼自身の人生観が織り込まれています。これが、
第一の心得で述べたナクトウェイの信条や理念のベースであり、こ
こから彼の様々なテーマが生まれたのではないでしょうか?

●テーマを定めるには、自分が得た衝動を出発点に、一つのテーマ
に落とし込む必要があります。

●しかし、主題を細かく分解していくという、要素還元主義的な手
法は、衝動をベースにした自己表現の世界では当てはめられないの
ではないか、と感じています。アートにおける自己表現の活き活き
とした世界が、この方法では失われてしまうのではないでしょうか?

●どうすればよいのでしょうか?

●私は、「言語化」という手法が非常に有効だと思います。


ということでした。

下記で前号について詳しくご覧いただけます。
<http://www.takahisanagai.jp/photoexhibition/psp/psp10.html>

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【第二の心得:自分だけのテーマ その4 言語化について】

テーマを決める簡単な手法は、この世の中には存在しない、と私は
思います。

しかしテーマを具体化する一つの方法として、今回紹介する「言語
化」があります。

ここで写真での表現について、改めて考えてみましょう。
(第5回のおさらいです)

写真に写るのはモノの形のみで、それ自体は意味を持っていません。
写真家は、撮影するという行為によってファインダー上に映る形に
「意味」を与えることになります。

その「意味」は写真家のメッセージであり、写真家にとっての真実
です。

「写真は、まこと(真)をうつ(写)す」とよく言われますが、私
は、この意味するところは、
「写真はカメラというメディアを介して撮影者自身にとってのこの
世の真実(=認識)を写し撮る」
ということなのではないかと考えています。

そして、その認識を画像に浮き上がらせる触媒がテーマです。

このためには、意識できない深層意識の底にある衝動を、自覚でき
る表層意識にまで浮かび上がらせ、テーマとして認識できるように
する必要があります。

この際に有効なのが、言語化です。
言葉で表現できないビジュアルな写真を撮るからこそ、徹底的な
「言語化」が必要です。

このためには、表現したいテーマをシンプルな言葉で表現できない
か、様々な言葉に置き換えてみて徹底的に考えてみてはいかがでし
ょうか?

「言語化」については、第6号でご紹介した田坂広志先生が、「な
ぜ、時間を生かせないのか?」という著書で、分かり易く述べてお
られますので、ご紹介させていただきます。

−−−(以下、引用)−−−−

実は、「言語化」という方法によって
「言葉で表せない智恵」を掴むことはできます。

なぜなら、この「言語化」とは、
あたかも「井戸水」を汲み上げる行為に似ているからです。

例えば、いま、井戸水を汲み上げていくときを想像しましょう。
そのとき、井戸水の「表層水」が「言葉で表せる知識」であり、
井戸水の「深層水」が「言葉で表せない智恵」であるとします。
このとき、「言語化」によって汲み上げることができるのは、
「表層水」だけなのですが、「表層水」を汲み上げていくと、
自然に「深層水」が井戸の表層近くに昇ってきます。
それは、「言葉で表せない智恵」というものが、
我々の「意識」によって掴まれやすくなっている状態を意味しています。

 ...(中略)...

実は、このことを、科学哲学者のヴィトゲンシュタインが、
『論理哲学論考』という著書の中で述べています。
彼のこの言葉は、この辺りの機微を述べたものです。

「我々は、言葉にて語り得るものを語り尽くしたとき、
言葉にて語り得ぬものを知ることがあるだろう」

−−−(以上、引用)−−−−


具体的な方法としては、あなたの写真作品や写真展のタイトルを考
えてみるのがよいかと思います。

写真作品や写真展のタイトルは、自分の表現意図を言語化し、作品
のメッセージを補完し、明確に他者に伝えます。タイトルは作品を
構成する重要な要素です。タイトルはテーマそのものとも言えます。

自分の撮りたいテーマをタイトル化するプロセス自体が、テーマを
さらに深めることに繋がります。深層意識を深堀することになるか
らです。

このプロセスを通じて、タイトルに、他人と違うあなたの写真のテ
ーマを込めてみてはいかがでしょうか?

タイトルは簡単で一般的なものであってはならないと思います。

逆に凝り過ぎる必要もありません。分かり易く、あなたの写真作品
だけが持つ価値が分かるようなタイトルが望ましいと思います。

蛇足ですが、よく見かける「無題」というタイトルは、この「言語
化」の努力を怠ったものであると私は考えます。世の中には色々な
考え方があると思いますが、私個人は「無題」というタイトルを付
けることにはあまり賛成できません。



さて、一旦テーマを決めて、そのテーマを真剣に追い続けた結果、
テーマが変わってくるのは大いに結構だと思います。それはテーマ
を深堀していることにもなるからです。そのたびに「言語化」を繰
り返して新しいテーマを言葉で表してみましょう。

また、「テーマを決めないと撮影は始めてはいけない」というもの
でもありません。撮影しながらテーマを決めていくという方法もよ
いと思います。むしろそちらの方が一般的かもしれません。

次回は、再び私のケースを取り上げて、言語化により実際にテーマ
を設定していく様子をご紹介します。

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【あとがき:皆様へのお願い】

今週は、「言語化」という手法の概念のご紹介が中心になり、分か
り辛かったのではないかと思います。次週は、具体的な例をご紹介
していきますので、ご期待ください。

ではまた来週。

                          永井孝尚

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