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■■■今週のポイント■■■
「自分しか撮れない写真のテーマを何にしようか?」と色々と考え
ても、堂々巡りでなかなか先に進みません。
実際には、先に何らかの衝動があって、テーマが定まります。
でも、どういうことか分かりづらいですよね。
実際のケーススタディで考えると分かり易いのではないでしょうか?

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第009号:2004/03/19
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■■■目次■■■
【あなたの声を聞かせてください】
【前号のポイント】
【第二の心得:自分だけのテーマ その2 ケーススタディ】
【新メルマガ、登録受付中】
【あとがき】

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【あなたの声を聞かせてください】

本メルマガは、読者の皆様と一緒に作っていきたいと思います。
是非あなたのご意見・ご質問・ご要望を聞かせてください。
(記入は1−2分程度です)

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【前号のポイント】

●第二の心得、『数十年という人生の中での長い時間スパンで、自
分だけのテーマを追い続け、撮り続ける』を8号から数回に渡って
連載します。

●最初に、そもそも何故自分だけのテーマが必要なのでしょうか?

●短い人生の中で、あなたが撮った写真作品群が、あなたにしか撮
れない、かけがえのない独自のモノになるかどうかのカギは、一貫
した独自の写真のテーマを持っているか否か、です。

●自分にとっての写真のテーマを問い続け、撮り続けることは、短
い人生の中で写真を撮る意味を探し続けることにもなります。

●ただし、「テーマが大事」と申し上げていますが、テーマは最初
に存在するモノではなく、あるきっかけで自ずと定まるものです。
ですから、一生懸命テーマだけを探していても、それを見つけるこ
とは至難の技です。

●本来は、「これを表現したい」「これを作品に残したい」という
強い衝動があり、その衝動を突き詰めていった結果がテーマに転じ
ます。従って、衝動が先にあり、その結果テーマが定まります。

●そのような衝動のきっかけは、日常生活の中で感じる感動がきっ
かけになることが多いのかもしれません。その感動を突き詰めて考
えていくうちに、...

→「可憐な花の力強い生命力を写し撮りたい」とか
→「年輪を重ねた表情を通して、人間の深みのある人生を何とか表
→現できないか?」とか
 「日本にはない海外の空気感を写真に残して、人々に分かち合い
 たい」

といったような衝動に転じるかもしれません。その衝動を突き詰め
ていった結果を、自分自身の写真のテーマにする、というのも、一
つの手段です。

●テーマは、一旦定めたら、それをとことん追い続けることが重要
です。一年間程度で頻繁にテーマを変えるのではなく、骨太なテー
マを5年・10年・20年・50年というスパンで追い続け、積み
重ねることで、あなたしか撮れない独自の世界を構築することが出
来ます。

●では、衝動をどのようにテーマに繋げていけばよいのでしょうか?

ということでした。

下記で前号について詳しくご覧いただけます。
<http://www.takahisanagai.jp/photoexhibition/psp/psp08.html>

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【第二の心得:自分だけのテーマ その2 ケーススタディ】

今回は、衝動をどのようにテーマに繋げていくのか、私のケースを
例にとってご紹介します。

私は1989年、27歳の時に、キャノンサロンで念願の個展を開
催しました。銀座・札幌・名古屋の各キャノンサロンで巡回展示を
していただきました。

この写真展のタイトルは"Tokyo Bay Area"で、東京湾岸をテーマと
したものでした。この作品は下記サイトに掲載しています。
(1993年に開催した"Tokyo Bay Area II"の作品と併せて掲載
しています)

<http://www.takahisanagai.jp/photoworks/tokyobayarea/tokyobayarea.html>

"Tokyo Bay Area"を撮り始めたのは1986年頃からですが、東京
湾岸は、その前から撮っていました。

私は子供の頃から横浜に住んでいたので、学生時代の1980年の
頃から「都市の光景」というタイトルで横浜・横須賀をモノクロで
撮っていました。

この時代の作品が"Tokyo Bay Area"の下敷きとなっています。学生
の頃から、何故かちょっと違う雰囲気を持つ横浜や横須賀に惹かれ
ていました。

「都市の光景」は下記サイトでご覧になれます。当時、工学部に在
籍していましたが、研究室にいるよりもカメラを持っている時間の
方が長いという日々を過ごしていました。

<http://www.takahisanagai.jp/photoworks/scene1981/scene1981.html>

1984年に大学を卒業し、現在の勤務先に入社しました。

新人の頃は仕事以外の余裕は全くなかったのですが、3年後にはあ
る程度の余裕ができました。そこで気分転換のために、週末の明け
方になると一人で羽田や湘南へドライブに行くようになりました。

そこで出会ったのは、今まで目にしたことがない光景でした。

いつもは見慣れている景色が、夜明け前の群青色の空気の中で息づ
いていました。また、普段は雑然とした工業地帯が夜明けの空の中
で美しいシルエットを見せていました。

最初は、夜中から明け方に変わる新鮮な空気の中に身を置き、ただ
その姿を眺めているだけでした。ウィークディの仕事の疲れが、そ
の空気の中に身を置くだけで洗い流される思いがしました。

そのようにして週末の湾岸通いが続くうちに、学生時代に熱中して
いた「写真」という表現手段で、このような光景を何らかの形で残
すことができないか、と思うようになりました。

間もなく、三脚と写真機材を積んで週末の湾岸通いに出かけるよう
になりました。

これが私が"Tokyo Bay Area"という作品を撮り始める最初のきっか
けでした。

そのようにして東京湾岸の写真を撮り続けていましたが、転機とな
ったのは1987年に羽田で撮影した次の作品でした。

<http://www.takahisanagai.jp/photoworks/tokyobayarea/tba8921.html>

生暖かい空気の中、この日は夜明け前の東の空全体が信じられない
程の深紅色に染まりました。夢中でシャッターを押し続けました。

写真を撮りながら、「神の啓示というものがあるとすれば、このよ
うな瞬間にあるのかもしれないな」と感じました。

この場に身を置いて、「この場の空気を写真に残し、他の人と感動
を共有したい!」という衝動を持ったのが、Tokyo Bay Areaシリー
ズを続けるに至った契機でした。この作品はそのきっかけとなった
思い出深い一枚です。

(後から分かったことですが、1986年末に伊豆大島で火山活動
があり、大気中に火山の塵が舞って地平線下の太陽が地平線上の塵
を照らした結果、このような色に染まったようです。フィリピンの
ピナツボ火山大噴火があった1991年の年末も、同じように真っ
赤な朝焼けや夕焼けを見ることが出来ました。この時は地球規模の
火山活動だったため、欧州にいた知人も同様に真っ赤な朝焼け・夕
焼けが見えたと言っていました)

そのようにして写真を撮り続けるうちに、作品が溜まってきました。
これを発表したいという思いが強まり、そのために写真展という手
段を考え始めました。写真展を開催したのはこの写真を撮ってから
2年後でした。

結果的には、「東京湾岸」というテーマは、私にピッタリでした。
夜中であれば自宅から30分で撮影場所に到着でき、天候が許せば
毎週末でも撮影に出かけられます。また、当時も現在も、私と同じ
スタイルで東京湾岸を撮り続けている写真家はいませんので、私独
自の視点でじっくり撮り込むことができます。さらに、東京湾岸地
帯は学生の頃から撮影しており、より深くテーマを掘り下げること
が出来ます。

私の場合、「写真のテーマをまず見つけよう」と頭で考えていたら、
恐らくこのテーマには到達しなかったと思います。やはり、感動を
憶える体験をし、取り敢えず写真を撮り始め、そこで得た衝動をひ
たすら追いかけた結果が、"Tokyo Bay Area"シリーズに繋がったと
思います。

"Tokyo Bay Area"シリーズは、1993年にパート2の写真展を開
催しました。また、このシリーズの撮影を始めてから20年近く経
過した現在も撮影を続けています。

以上、私の体験をベースに、どのようにテーマを見つけていくのか
をご紹介致しました。 頭だけで考えず、自分の衝動を基本に深堀
していくことが、テーマ発見の近道と思います。

しかしながら、衝動を憶えても最終的に写真のテーマに繋がらない
ことも多いと思います。自分だけのテーマに到達するための方法論
もあるのではないでしょうか?

次回はその辺りから始めていきたいと思います。

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【あとがき】

私の写真作品が初めて店頭に並ぶことになりました。

3月1日より、東京・自由が丘にあるカードテリア様自由が丘店で、
私のポストカードを委託販売いただいています。

全部で3種類、4月30日までの期間限定です。
詳細は下記にあります。
<http://www.takahisanagai.jp/cgi-bin/cargo2/index.html>

自由が丘にお越しの際には、是非お立ち寄り下さい。 

実は自由が丘への数往復分の交通費で消えてしまう程度の売上しか
上がらないので、ほとんどボランタリーなのですが(^o^;)、それで
もやはり「自分の作品を何らかの形で他の方に見ていただきたい」
という気持ちが大きな動機になっています。

カードテリア様は、3ヶ月程前にお願いすれば委託販売を受けてい
ただけます。ご興味のある方は、下記をご覧ください。
<http://www.cardteria.com/consignment.html>

ではまた、来週。
                          永井孝尚

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Copyright(C), 2004 永井孝尚


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