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■■■■『プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーへ!』■■■■
上を目指すアマチュア写真家のためのメルマガ
                     <http://www.takahisanagai.jp>
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■■■今週のポイント■■■
プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーに求められる
自己確立。どのようにすればよいのでしょうか?
ヒントは、意外と身近にあります。

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第006号:2004/02/28
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■■■目次■■■
【あなたの声を聞かせてください】
【前号のポイント】
【第一の心得:写真はライフワーク その3 自己確立について】
【今週の壁紙】
【あとがきを兼ねたお礼】

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【あなたの声を聞かせてください】

本メルマガは、読者の皆様と一緒に作っていきたいと思います。
是非あなたのご意見・ご質問・ご要望を聞かせてください。
(記入は1−2分程度です)

<http://www.formman.com/form.cgi?gOifBUg2nMuZ8wtt>

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【前号のポイント】

●アマチュア写真家が、意志を持たずに漫然と写真を撮り続けても
プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーにはなれません。

●なぜなら、
 「写真を撮る際に、明確な意志がない」
→「写真を通じて表現したい自己がない」
→「写真というメディアを通じて伝えたいメッセージがない」
ということですので、写真作品で自己表現を行い、他人に何かを伝
えることはできないからです。

●「何故、自分は、人生の限られた大切な時間を使って、写真を撮
り続けているのか?」と問い続けることが重要です。

●プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーは自分の作品
に真剣に向き合わなくても生活上は全く支障がありません。実はこ
のことが大きな落とし穴です。常に安易な態度に流される危険性が
あり、それを歯止めする仕組みを持たないからです。

●落とし穴に陥らないためには、プロフェッショナル・サンデー・
フォトグラファーには『自己規律』と『自己確立』が求められます。

●『自己規律』とは「自分の作品に対するプロフェッショナルな考
え方」です。そのためには、自分の写真に対する確固たるプライド
と厳しい態度が必要です。

●自己規律の簡単なテストがあります。

(中略)

●『自己規律』とは、「作品を通して、自分自身の全人格が世の中
から評価されてしまうこと」を受け容れるということです。

●落とし穴の原因の一つは、写真そのものが持つ特性です。技術革
新で、最近が誰が撮影してもきれいに写りますが、同じ時間・同じ
場面でも、人によって出来上がる写真は微妙に異なるため、「この
写真は自分にしか撮れないモノ。自分自身のオリジナル、つまり作
品である」と錯覚してしまう危険性があります。

●写真に写るのはモノの形のみで、それ自体に意味を持ちません。
→撮影者は、撮影するという行為によってファインダー上に映るそ
 の形に「撮影者のメッセージ」という意味を与えます。
→そのメッセージとは、その人の深層意識も含めた全人格的な思想
 に基づいたものであり、その人にとっての真実です。

●よく言われる「写真は、まこと(真)をうつ(写)す」の意味す
るところは「写真はカメラというメディアを介して撮影者自身にと
ってのこの世の真実(=メッセージ)を写し撮る」ということです。

●プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーと、自己満足
のために写真を楽しんでいるアマチュア写真家を分けるポイントは、
「発表する写真作品を通じて、自分自身が世の中にさらけ出される」
ということを理解し、覚悟と確信を持って写真に取組んでいるかど
うか、ということなのではないでしょうか?

●では、二番目のポイント、『自己確立』とは何でしょうか?

ということでした。

下記で前号について詳しくご覧いただけます。
<http://www.takahisanagai.jp/photoexhibition/psp/psp05.html>

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【第一の心得:写真はライフワーク その3 自己確立について】

今回は『自己確立』についてです。

最初に質問です。

●写真家は、世間に染まらない非常識人であるべきである
●写真家は、世間を知る常識人であるべきである

あなたはどちらが正しいと考えますか?

世の中では、見かけ上はエキセントリックな行動・行動が目立つプ
ロフェッショナル・フォトグラファーが存在します。ともすると、
若くしてプロの写真家を目指す人達の中には、写真家はそのように
振舞わなければならないと考え、そのような人達の行動を真似し、
世間に染まっていないことを誇る人もいるかもしれません。

しかし私は、写真家は、世間や自分自身の問題と真正面から積極的
に関わり、世の中で自律した人間として、自分自身を確立しようと
格闘している常識人であるべきと思います。

先に述べたように、写真は世の中の「かたち」をそのまま写し撮る
メディアです。写真家は撮影するという行為によってそれ自体は意
味を持たない「かたち」に意味を与えます。

つまり、「写真はカメラというメディアを介して撮影者自身にとっ
てのこの世の真実(=メッセージ)を写し撮る」わけです。

写真はあくまでもメディアです。写真家に問われているのは、写真
を通じて伝えたいメッセージを持っているかどうかということです。

写真家は「かたち」を写し撮る行為に集中し傍観者的立場になりが
ちですが、実はメッセージの深さは、どれだけ深く被写体に関わっ
ているか、ということに比例するのではないでしょうか?

さらに、より深く被写体と関わるためには、自分自身がより成長す
ることが求められます。

ジェームズ・ナクトウェイという戦争写真家がいます。
「戦場のフォトグラファー」というドキュメンタリー映画で、彼の
ことをご存知の方も多いと思います。

下記サイトに「戦場のフォトグラファー」の紹介がありますので、
もしご興味がありましたらご参考になさってください。
<http://www.mediasuits.co.jp/senjo/>

ナクトウェイからは、志と自分の伝えたいメッセージを持ち続ける、
プロフェッショナルフォトグラファーのあるべき姿を学ぶことがで
きます。

彼は、写真家という存在について、
「....全ての人がその場に身を置くことはできない、だからこそ写
真家がいる。彼らのやっていることを人々に見せ、手を伸ばして気
づかせ、止めさせ、起きていることに注意を向けさせるために。」
と語っています。

その上で、彼は「写真により戦争をなくすることができないか」、
と考えています。

彼の戦場での生々しい写真からは想像し難いのですが、彼は被写体
となる人々と積極的にコミュニケーションを取ります。被写体とな
る人々から信用して受け入れられない限り、彼は決して写真を撮り
ません。

彼はまた、
「他人の悲劇で写真家は得をしていると感じるのが一番辛い。個人
的な野心を優先するのは魂を売り渡すことだ。人を思いやれば人か
ら受け入れられ、私も私を受け入れられる」
と語っています。

ナクトウェイからは、悲惨な現場に身を置く戦争写真家であっても、
傍観者としてではなく、どれだけ自分の被写体となる対象に深くコ
ミットし続けているかが問われるのだ、ということを学ぶことがで
きます。

「自分はカメラマンとして、現場の姿を無機的・機械的に写し撮り、
それを真実として世の中に伝えればよいのだ」という割り切った姿
勢は、彼にはありません。

実際、ナクトウェイは、「私は、私自身が助けなければ他に誰もい
ない場合は、カメラを置いて助けることをルールにしている」と語
っています。

戦場を離れた場所でも、「写真家は観察者・傍観者であり、世の中
では特別待遇である。浮世離れしていてよい」という考えは間違っ
ているのではないでしょうか? 地に足がついた考え方を持ってい
なければ、写真家は写真を介して人々を共感する深いメッセージを
発することは出来ないはずです。

ナクトウェイの写真の中にあるのは、強固な思想と、決定的瞬間の
場で被写体を介してメッセージを発信できる集中力であり、これら
があるからこそ、人はナクトウェイの写真に心が揺り動かされるの
だと思います。

では、プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーがこのよ
うな思想や集中力を身に付けるためには、何をすればよいのでしょ
うか?

「写真以外の仕事を選び、日常業務に忙殺されている今、写真に必
要な思想や集中力を身につけることは難しい」とお嘆きなのではな
いでしょうか? やはり、写真を職業として選ばなければならなら
ないのでしょうか?

決してそのようなことはありません。

プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーは、本業の仕事
を持っています。本業の仕事を通じ、プロフェッショナルとして世
の中の問題と真剣に格闘し、関わり続けることで、自分自身の思想・
信条・理念は確実に築かれていきます。また、密度の濃い仕事を続
けることで集中力も磨かれていきます。

私は、写真を本業に選ばないプロフェッショナル・サンデー・フォ
トグラファーは、「仕事はそこそこで切り上げ、浮いた時間を写真
に費やす」という発想は捨てるべきと思います。

むしろ、プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーこそ、
仕事のプロフェッショナルとして、仕事に全力で取組み、仕事を通
じて一人の人間として自分自身を成長させ続け、世の中に対するモ
ノの見方を磨くべきなのではないでしょうか?

実は、私が初めて写真展を行った20代後半は、仕事では多忙を極
めた時期でした。まだまだ仕事は経験未熟でしたが、ウィークデー
は睡眠時間3−4時間でプライベートが全くないという状態が続き、
週末も頻繁に出社していました。

当時、キャノンサロンで行った"Tokyo Bay Area"という写真展の作
品は、このような状況の中で撮影していました。

当時は、「ウィークデーは仕事に全力投球して、週末は写真で発散
しよう」と考えていたのですが、今からふりかえると、実は真剣に
仕事へ全力投球をして考え方や集中力を磨いたのがよかったのだと
思います。実際、写真を撮る時間が豊富にあった学生時代よりも、
写真のレベルは上がりました。

仮に、与えられた最小限の仕事のみ行い、仕事は早々に切り上げ、
写真三昧の生活を続けていたとしたら、恐らく私の場合は写真展開
催に繋がる作品は残せなかったのではないかと思います。


私が人生の師と仰ぐ田坂広志先生は、「知的プロフェッショナルへ
の戦略」という著書で、

 プロフェッショナルは、
 自分が働くことを通じて生み出しているものを、
 かけがえのない「作品」であると思っているのです。

と述べておられます。 私が大好きな言葉です。

(田坂先生については、下記サイトをご覧下さい)
<http://www.hiroshitasaka.jp>

仕事と写真は全くテーマが異なるものですが、本業のプロフェッシ
ョナルとして仕事をアートと考え、仕事を通じて心を込めて様々な
「作品」を生み出し続けることが、プロフェッショナル・サンデー・
フォトグラファーとして自分だけのかけがえのない写真作品を生み
出し続けることにも繋がっていくのではないでしょうか?

古来、アートは生活に根ざしたものだったと言われます。
例えば、壁画は、農作物の実りや豊かな狩猟を祈って描かれました。
この時代、日々の生活と不可分であったアートがありました。

その後、アートは洗練されていき、閉鎖された非日常的な空間で、
限られた人達の鑑賞のために、限られた人達が制作するものになっ
ていきました。

20世紀後半、写真が一般大衆に普及し、日常の中で写真により自
己表現することが出来るようになりました。

閉鎖された空間に密閉されていたアートが写真という手段により開
放され、再び生活者がアートに関わることが可能になった、という
時代が現代であるように思います。

これは、一種の原点回帰とも言えるのではないでしょうか?

写真以外の世界で、仕事のプロフェッショナルとして積極的に世の
中と関わっているプロフェッショナル・サンデー・フォトグラファ
ーこそが、写真というメディアを介し、様々な自己表現を行ってい
く絶好の立場にいるのではないかと思います。

仕事も写真も、アートと考えて真剣に行うことが、プロフェッショ
ナル・サンデー・フォトグラファーに求められる自己確立に繋がる
はずです。

『第一の心得:写真はライフワーク』は今回で終了です。

次回は、『第二の心得』に移る前に、皆様からいただいたご意見を
ご紹介し、プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーにつ
いて一緒に考えていきたいと思います。

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【今週の壁紙】

1週間期間限定で1024×768の壁紙をご提供しています。
(注:必ず下記『著作権及び利用規程』をご承諾の上利用下さい)
<http://www.takahisanagai.jp/copyrights/copyrights.html>)

今週の壁紙は、Tokyo Bay Areaから「Tokyo" - 川崎港、1988」で
す。明け方、川崎港で日の出を撮影しているうちに、日が高くなっ
てきました。気が付くと、海外から東京宛に届いたと思われる材木
が、朝の陽を受けて黄金色に輝いていました。東京湾岸を象徴する
空気感を感じ、超広角ズームでカメラに収めました。

<http://www.takahisanagai.jp/wallpaper20040229/tba8902px.html>

このページは3月6日にアクセスできなくなりますので、お早めに。

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【あとがきを兼ねたお礼】

前号も沢山のご意見をいただきました。厚く感謝申し上げます。

いただいたご意見は、次号でまとめて特集号としてご紹介致します。

できれば、ご紹介するご意見に対して、皆様からもさらにご意見を
いただき、議論を発展出来れば、と考えております。

本号についても、是非、皆様のご意見をいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。

ではまた、来週。
                          永井孝尚

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発行人:永井孝尚 <mailto:mail@takahisanagai.jp>

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