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■■■■『プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーへ!』■■■■
上を目指すアマチュア写真家のためのメルマガ
                     <http://www.takahisanagai.jp>
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■■■今週のポイント■■■
プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーは単に労力をか
ければなれる、というものではありません。
ポイントは考え方です。
でも、結構落とし穴もあったりします。
今回は、そんなお話です。

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第005号:2004/02/21
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■■■目次■■■
【あなたの声を聞かせてください】
【前号のポイント】
【第一の心得:写真はライフワーク その2 自己規律について】
【皆様の声】
【今週の壁紙】
【あとがき:季節の空気感と写真】

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【あなたの声を聞かせてください】

本メルマガは、読者の皆様と一緒に作っていきたいと思います。
是非あなたのご意見・ご質問・ご要望を聞かせてください。
(記入は1−2分程度です)

<http://www.formman.com/form.cgi?gOifBUg2nMuZ8wtt>

(前回いただいた声は、【皆様の声】のコーナーに掲載しています)

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【前号のポイント】

●第一の心得(『写真を趣味ではなく、ライフワーク、自己表現手
段と捉え、「写真とは何か?」を考え続けている』)を理解するた
めには、「職業的プロフェッショナルフォトグラファー」と「アー
ト的プロフェッショナルフォトグラファー」の違いを最初に理解す
ることが大切です。

●「職業的プロフェッショナルフォトグラファー」は、写真を撮影
し、その見返り・対価として広告主等のクライアントから金銭的報
酬を得ています。最優先されるのはクライアントの要望であり、常
にクライアントの要望に合った写真を確実に提供することを考えて
います。

●例えてみれば、
「お客様はこのようなものを求めています。従って、このような機
能の製品を、この期日、この市場に対して、この時期までに開発し
て下さい。但し目標を達成すれば食い扶持は保証します」
という課題を与えられた、モノ作りが大好きな製品エンジニアのよ
うな立場です。 つまり会社勤めの方と同じような環境で仕事をし
ています。

●一方、「アート的プロフェッショナルフォトグラファー」は、自
分の写真にお金を払ってくれる人はいません。(クライアントの個
々の要望に合わせて写真を撮っている訳ではありません)

●逆に言えば、クライアントの要望から離れて自由に自己表現でき
るのが、アート的プロフェッショナルフォトグラファーの特権です。
従って、自分の価値観をいかに写真というメディアを介して表現で
きるかがカギです。

●例えてみれば、
「自分の時間を自由に使い、自分の理想の製品を作ってやるぞ。し
かし、食い扶持は自分で別途稼いでやる」
というエンジニア魂に燃えた技術者のような立場です。

●日本は写真文化を生み出す土台が世界で一番整っています。この
ような国だからこそ、アマチュア写真家がアート的プロフェッショ
ナルフォトグラファーとして写真文化を創造できると思いませんか?

●しかしながら、休日には必ずカメラを持ち歩き、あらゆる被写体
を追いかけ、労力をかけて一生懸命撮り溜めても、必ずしもアマチ
ュア写真家がアート的プロフェッショナルフォトグラファーになれ
る訳ではありません。

●意識がアマチュアのレベルに留まっている限り、例え多大な時間
と労力をかけても、表現者としての写真家にはなれないためです。


ということでした。

下記で前号について詳しくご覧いただけます。
<http://www.takahisanagai.jp/photoexhibition/psp/psp04.html>

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【第一の心得:写真はライフワーク その2 自己規律について】

アマチュア写真家が、意志を持たずに漫然と写真を撮り続けて、沢
山の作品を撮り溜めても、プロフェッショナル・サンデー・フォト
グラファーにはなれません。

仮に毎週末の休みには必ずカメラを持ち歩き、多大な労力をかけて
自分が出会うあらゆる被写体を一生懸命撮り溜めたとします。

それでも、明確な意志がなければ、その努力は作品として報われる
ことはありません。

これはどういうことでしょうか?

「写真を撮る際に、明確な意志がない」ということは、
「写真を通じて表現したい自己がない」ということです。

つまり、
「写真というメディアを通じて伝えたいメッセージがない」
ということですので、写真作品で自己表現を行い、他人に何かを伝
えることはできないのです。

何故なら、自分で伝えるものを何も持っていないのですから。

どうすればいいのでしょうか?

自分自身の写真のテーマを決めることはもちろん大切です。これは
第二の心得で述べたいと思います。

しかしながら、
「伝えたいメッセージがない。だからテーマを決めたい」
と考えるのは、本末転倒のような気がします。

ある衝動があってテーマが自ずから定まり、その結果
「私はこのメッセージを写真を通じて伝えたい」
というようになるのが本来のあり方であるように思います。

そのようになるためには、どうすればいいのでしょうか?

重要なのは、

「何故、自分は、人生の限られた大切な時間を使って、写真を撮り
続けているのか?」

と問い続けることなのではないでしょうか?

これは答えのない問いかもしれません。
しかし、問い続けることで、テーマが定まってくるのではないかと
思います。

言い方を換えると、

●「単なる自己満足で撮っているのか」
●「それとも自己表現の手段として撮っているのか」

と、問い続けることなのだ、とも言えるかもしれません。

ただ、この境界線は非常に難しくもあります。本人は自己表現のつ
もりで撮っていても、回りは自己満足としてしか捉えない場合もあ
ります。

また、それが自己表現なのか自己満足なのかはあくまで主観的な問
題であり、回りの評価が正しいとは限りません。絶対的・客観的な
真実は存在しません。

結局、自分自身で自問自答しながら悩み苦しむというプロセス自体
に意味があるのではないかと思います。

私自身、この苦しみを味わいながら作品を作っていっています。
「本当にこの作品でよいのだろうか?」
「結局、今回の写真展は自己満足に過ぎなかったのではないか?」
と、翌日の写真展開催を控えて全ての準備を終えた段階に至っても
自問自答し不安を感じています。

ここで、プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーの大き
な問題が一つあります。

プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーは自分の作品に
真剣に向き合わなくても生活上は全く支障がないということです。

実はこのことが、プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファ
ーの大きな落とし穴になります。

何故なら、常に安易な態度に流される危険性があり、それを歯止め
する仕組みを持たないからです。

写真で生計を立てているアート的プロフェッショナルフォトグラフ
ァーが持つ独特の凄みを、プロフェッショナル・サンデー・フォト
グラファーはなかなか持つことができません。

落とし穴に陥らないためには、プロフェッショナル・サンデー・フ
ォトグラファーには次の二つが求められます。

●『自己規律』
●『自己確立』

では、最初の『自己規律』とは何でしょうか?

『自己規律』とは「自分の作品に対するプロフェッショナルな考え
方」です。そのためには、自分の写真に対する確固たるプライドと
厳しい態度が必要です。

ここで自己規律の簡単なテストをしてみましょう。

まず、1週間前でも1年前でも結構ですので、最近ご自分が撮られ
た未発表の写真で、自分自身が気に入っていて他人に見せたい、出
来れば写真展に出してみたい、と思っている作品を一点だけ思い浮
かべてみてください。



思い浮かべましたか?



さて、ここで、あなたが不幸にして今すぐこの世を去らなければな
らなかったとします。

この世を去るあなたは、先程選んだ写真作品について人々に口頭で
説明することは一切できません。後世の人々は、「あなた」という
人物を、残された写真作品のみで判断することになります。

ここで改めて質問です。あなたは、
「あなたの死後、あなたという人間はその作品で後世の人々に評価
される」という事実を受け容れることが出来ますか?


『自己規律』、つまり「自分の作品に対するプロフェッショナルな
考え方」とは、「作品を通して、自分自身の全人格が世の中から評
価されてしまうこと」を受け容れるということです。

この観点で考えると、
「写真をライフワーク・自己表現手段として考える」
の意味するところは、
「自分自身の作品を、自分の人生そのものとして受け入れられるか
どうかである」とも言えます。

技術革新で、最近のカメラは誰が撮影してもきれいに写ります。
昔はうまく写すこと自体が大変でしたが、技術が進歩した現代、う
まく写るのは当たり前になりました。

しかしながら、同じ時間・同じ場面でも、人によって出来上がる写
真は異なります。同じ写真は二度と撮れません。

厳しい自己規律を持たずに出来上がった写真を、撮影者は
「この写真は自分にしか撮れないモノ。自分自身のオリジナル、つ
まり作品である」と錯覚してしまう危険性があります。

しかも、厳しい自己規律を持たなくても、写真というものはそれら
しい表現が出来てしまうメディアです。

実は、これが落とし穴の原因の一つです。
しかも、他のアートでは見られない、写真ならではの原因です。

実は、写真に写るのはモノの形のみです。
形はあくまで形であり、それ自体は意味を持っていません。
その形に意味を与えるのが、人間です。
撮影者は、撮影するという行為によってファインダー上に映るその
形に意味を与えることになります。
その意味とは、撮影者のメッセージに他なりません。
また、そのメッセージとは、その人の深層意識も含めた全人格的な
思想に基づいたものであり、その人にとっての真実です。

「写真は、まこと(真)をうつ(写)す」とよく言われます。

私は、この意味するところは、
「写真はカメラというメディアによりこの世の真実をそのまま写す」
ということではなく、
「写真はカメラというメディアを介して撮影者自身にとってのこの
世の真実(=メッセージ)を写し撮る」ということなのではないか
と考えています。

逆の見方をすると、その人の写真作品を見れば、その人にとってこ
の世の中がどのようなもので、どのような思想を持っているかが分
かるということでもあります。

これは、非常に怖いことです。

自己表現として写真に取組んでいるプロフェッショナル・サンデー・
フォトグラファーと、自己満足のために写真を楽しんでいるアマチ
ュア写真家を分けるポイントは、

「発表する写真作品を通じて、自分自身が世の中にさらけ出される」

ということを理解し、覚悟と確信を持って写真に取組んでいるかど
うか、ということなのではないでしょうか?

この覚悟と確信の有無が、写真を「人生の中での大切なライフワー
クであり、自己表現手段」として考えるのか、「余暇に楽しむ趣味」
として考えるのか、という違いに繋がってくると思います。

では、プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーが落とし
穴に陥らないために求められる二番目のポイント、『自己確立』と
は何でしょうか?

続きは次回でお話したいと思います。

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【皆様の声】

今回もご意見をいただきました。ご紹介します。

●『今週号も楽しく拝読させて頂きました。 始めてから4ヶ月た
った今も、ただ「良いな」と思う自分の感性に任せて被写体を無差
別に撮り続けている、自称「徒然カメラマン」の私です。今週号の
内容は、自分のためにあるようなもので早く次号が読みたいです。
ところで、永井さんはどのような機材をお使いなのでしょうか。ま
た、レタッチ等はされているのでしょうか。とても色鮮やかで、今
持っているデジカメでは出せそうにないと思ったので、参考までに
お聞きしました。』(T.SEKIYAさん)

→ありがとうございます。ご参考になったようで、嬉しく思います。

 写真を始めた時期に無差別に撮り続けるのは非常によいことだと
 思います。私も毎日のようにカメラを持ち歩いて撮りまくってい
 ました。そのうち、自分が写真を続ける意味と、自分が撮りたい
 ものが見えてくると思いますので、それらを深堀していくとよい
 のではないでしょうか?

 機材についてですが、私はまだデジカメで作品は撮っていません。
 最初の頃は主にオリンパスOM−1とキヤノンF−1/NF−1、
 90年代になってからキヤノンEOS各種を使っています。(他
 に、ミノルタCLEやリコーGR1s等も使っています)
 ホームページ用には、フィルムスキャナーで読み込んでいます。

 デジカメも色々と検討しているのですが、自分の表現したいこと
 とデジカメに今のところギャップがあることとから、現在のとこ
 ろはまだ作品の撮影にデジカメは使っていません。

 しかし、メーカーから機材をお借りし何回か撮影してみて、写真
 表現の幅が大きく拡がることは実感していますので、数年後に機
 会があれば使ってみたいと思っています。

 機材関係のお話も、後程メルマガで詳しく紹介したいと思います。

 ただ、やはり機材は手段なのですよね。写真をご覧いただく方に
 は作品に集中していただきたいので、私はなるべく機材に関する
 情報はホームページや写真展では紹介しないようにしています。

T.SEKIYAさん、どうもありがとうございました。

●本メルマガは、読者の皆様と一緒に作っていきたいと思います。
是非あなたのご意見・ご質問・ご要望を聞かせてください。
(記入は1−2分程度です)

<http://www.formman.com/form.cgi?gOifBUg2nMuZ8wtt>

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【今週の壁紙】

1週間期間限定で1024×768の壁紙をご提供しています。
(注:必ず下記『著作権及び利用規程』をご承諾の上利用下さい)
<http://www.takahisanagai.jp/copyrights/copyrights.html>)

今週の壁紙は、「風の景色」から"Byron Bay, Australia, 1996"
です。Byron Bayはオーストリア最南端の美しい町でした。この日
のByron Bayは美しい青空が広がり、ハングライダーが気持よさそ
うに飛翔していました。

<http://www.takahisanagai.jp/wallpaper20040222/sw35px.html>

このページは2月29日にアクセスできなくなりますので、お早めに。

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【あとがき:季節の空気感と写真】

ここ関東地方では、少しだけ暖かくなってきました。

真冬からやや寒さが和らいだこの季節、空気感もものすごく変わり
ますね。写真もこの影響を大きく受けますので、ここ1−2週間で
撮れる写真も大きく変わってきます。

私は真冬独特な透明な空気感が好きで、この冬は夜中や明け方に東
京湾岸へ写真を撮りによく出かけていました。これからは、今まで
撮影できなかったやや霞がかった空気感の中で写真が撮れるように
なります。季節の変化を楽しみながら撮っていきたいと思います。

ではまた、来週。
                          永井孝尚

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発行人:永井孝尚 <mailto:mail@takahisanagai.jp>

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