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■■■■『プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーへ!』■■■■
一つ上を目指すアマチュア写真家のためのメルマガ
                     <http://www.takahisanagai.jp>

■■■今週のポイント■■■
あなたは、プロフェッショナル・フォトグラファーに憧れています
か? 自分はどのような写真家になりたいのか、時間をかけてじっ
くり考えてみることは、決して無駄にはならないと思います。
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第002号:2004/02/01
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■■■目次■■■
【前回のポイント】
【プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーとは?】
【今週の壁紙】
【あとがき】

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こんにちは。寒い日が続きますね。

私は遠距離通勤なので、毎朝、太陽が顔を見せる前に家を出ます。

我が家は神奈川県の中心辺りにあるマンションの13階なのですが、
空気の澄んだこの季節、晴れた日には数十Km程遠くにある横浜ラ
ンドマークタワーが、夜明け前に赤く染まった地平線上で、とても
幻想的に見えます。

先週の某日はあまりに美しかったので、出社前の忙しい最中にいて
も立ってもいられず、ベランダに三脚を立てて超望遠レンズで撮影
をしました。

ただ最新機材ではあまり長いレンズを持っていないので、昔のMF
レンズ(FD300mm F4L)とx2テレコンを旧F−1に付
けて撮影しました。う〜む、ブレていなければいいのですが。

ということで、今週も早速始まります。

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【前回のポイント】

●写真を本業としていない方でも、自分独自の写真のテーマを持ち
 続けて素晴らしい作品を発表し続けている方は大勢おられます。

●例えば、緑川洋一さんという写真家。
 本業は歯医者さんですが、「色の魔術師」「光の魔術師」と言わ
 れ、瀬戸内海の非常に美しい写真を撮影し続け、勲四等瑞宝章と
 いう勲章まで授賞されています。
<http://www.fujifilm.co.jp/photographer/2001_01midorikawa/index.html>

●写真を本業としていなくても、プロを圧倒する写真作品を撮られ
 ている方もいます。アマチュア写真家とプロフェッショナル・フォ
 トグラファーを区別するものは何なのか、難しいのですが....。

●「写真を本業としていなくても、プロを圧倒する写真作品を撮ら
 れている人達」を、このメルマガでは「プロフェッショナル・サ
 ンデー・フォトグラファー」と呼びます。

●ということで、このメルマガのテーマは『アマチュア写真家はい
 かにすれば自分の作品を高めていけるのか』です。

●ところで、プロフェッショナル・フォトグラファーの定義とは何
 でしょうか?

●色々と調べると、「自分自身が信念を持って写真に取組み、かつ、
 公に自分の作品を人々に問うているのか?」と言えそうです。

●そこで、ビジネスとアートの二つの軸で考えると、

 ■ビジネス:結果をお客様が満足し評価していただけるか?
  (マーケットインの発想)
  →職業的プロフェッショナル・フォトグラファー

 ■アート:作品を自分自身の基準で評価できるか?
  (プロダクトアウトの発想)
  →アート的プロフェッショナル・フォトグラファー

●この違い、何でしょうか?

ということでした。

尚、下記で前号をご覧いただけます。
<http://www.takahisanagai.jp/photoexhibition/psp/psp01.html>

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【プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーとは?】

職業的プロフェッショナルフォトグラファーはどのような世界で生
きているのでしょうか?

言うまでもなく、ビジネスの世界で生きています。

もう少し詳しく言いますと、

1.自分の好みに関わらず、いつも異なる特定の条件の中で、常に
 一定以上のクオリティを持った写真を撮れる。同じ場面は二度と
 ない状況で、失敗は許されない

2.クライアントのニーズを汲み取り、ニーズに合った写真を確実
 に提供でき、その結果をお金に結びつけることが出来る

3.さらに、自分の価値観も入れて、クライアントのニーズを上回
 る結果を出せるように日々研鑚している

このように考えると、職業的プロフェッショナル・フォトグラファ
ーは、ビジネス上の大きな責任を持って、厳しい世界で生きていま
す。アマチュア写真家には想像できないかもしれません。

では、アート的プロフェッショナルフォトグラファーはどのような
世界で生きているのでしょうか?

こちら言うまでもなく、アートの世界で生きています。

具体的には、

1.職業やお金とは関係ない世界で写真を撮っている。生き方その
 もの。従って、そもそも「アートでは食えない」のが本来の姿

2.クライアント等、外部の制約のない状況で、信念を持って自分
 の価値観を自己表現できる。 自分の好みの条件で撮影できる
 (但し多くの場合、金銭的・時間的等、様々な現実的制約があり
 ます)

両者の差は何でしょうか?
ここでちょっと考えてみてください。

....




ポイントは、「お客様」の差です。

職業的プロフェッショナルフォトグラファーの場合、「お客様」の
定義は「お金を出してくれる人」です。

アート的プロフェッショナルフォトグラファーの場合、「お客様」
は存在が難しい概念です。なぜならアートとは、「これを表現した
い」という自分の中の衝動が源泉になっているからです。強いて言
えば「お客様」の定義は「自分自身の内なる衝動」と言えるかもし
れません。

職業的プロフェッショナルフォトグラファーの「写真をお金に繋げ
られる」力は特殊能力です。しかしながら、この能力は、アート的
プロフェッショナル・フォトグラファーの必要条件ではありません。

一方で、アート的プロフェッショナルフォトグラファーは自分自身
で表現したいテーマを持ち、場合によっては多くのものを犠牲にし
てでもその衝動を表現に繋げていきます。

もしあなたがアマチュア写真家で、プロの写真家を志向しているの
であれば、ここで改めて質問です。

●あなたは、写真でお金を稼げる写真家になりたいのですか?

●それとも、写真で自分自身の表現したいテーマを追及したいので
 すか?

....




実はこれは、15年前に私自身が自問自答した質問です。
このお話をしたいと思います。

当時、私は社会人になって数年目でした。写真が大好きだった私は、
大学卒業の年、写真家に志しながら、

『まずは社会に出て一人前の仕事を行えるようになるのが先決』

と考えIT企業に就職し、まとまった仕事も任せられるようになり、
併せて念願だった写真の個展も開催した時期でした。(この時期の
詳しいお話しは、本メルマガで作品発表の方法の述べる時にご紹介
します)

この時期、会社を辞めてプロの写真家になるか、仕事を続けていく
か、ずいぶん悩みました。新聞社のカメラマン募集広告を見て応募
も考えたりしました。

プロの職業的写真家にも多く会いました。言うまでもなく写真が好
きでこの世界に入った方ばかりなので、皆アート的プロフェッショ
ナルフォトグラファーを志していました。

少数の成功された方もいましたが、多くの20代・30代のプロの
職業的写真家からは異口同音に次の言葉を聞きました。

「お金がない。生活が非常に苦しい」
「自分の撮りたい写真を撮れない」

広告写真家向けの雑誌で「コマーシャル・フォト」という雑誌があ
ります。ある日、大学写真部の先輩の紹介で「注目の若手フォトグ
ラファー」としてこの雑誌の巻頭特集を飾った方にお会いしました。
売れっ子としてどのように活躍されているのだろう、と思いながら、
お話を伺いましたが、現実は非常に厳しいものでした。

例えば収入。
年収は1000万円程度とのことでしたが、機材・フィルム・助手
の経費も全てこの収入から支払います。クライアントから依頼され
た写真は絶対に失敗できないので、フィルム代を必要以上にケチる
ことはできません。実質上写りは大差ないとは言え、機材も最上級
のものを使用する必要があります。

助手に渡している月収は10万円でした。この金額が多いか少ない
かは議論が分かれると思います。助手からすると、この金額で滅私
奉公する訳で、志がなければやってられません。一方で、雇う側か
らすると限られた収入の中で10万円は大金です。ちなみにお金が
苦しい中で助手を雇う理由はクライアントの信用を得るためです。
やはり助手がいる、いないでは、クライアントの印象は大きく変わ
るようです。

結局、若手の売れっ子にも関わらず、実際に使えるお金は年収の半
分程度ということになります。

ちなみに、その人は10年落ちのボロボロのカローラに乗っていま
した。それが実に格好よかったのを憶えています。

一方で、自分の作品を作る時間が全く取れなくなりました、仕事で
撮影している写真はクライアントの要求に応える商品であって作品
ではありません。「自分の作品ならこのような表現をするのに」と
いう場合でも、クライアントの要望が絶対優先です。従って、自分
自身の作品を作るには、極めて忙しい中、睡眠時間を削ってでも別
途時間を捻出する必要があります。

後日、この方はカメラマンを辞めたという話を聞きました。
才能がある方だったので、大変残念です。

以上が15年前、20代後半当時の若い私の眼に写ったプロの職業
的写真家の現実でした。(尚、これはバブル当時の景気がよかった
頃の話ですので、今ではもっと厳しいかもしれません)

40代になった今、同じ経験をするとまた全く違った印象を持つか
もしれません。例えば、「生活が苦しい」「作品を撮れない」と語
る写真家の眼の中に、疲れた中にも「それでも自分には夢がある」
と密かに輝く強い意志と希望を感じ取ったかもしれません。

しかし、その時には、私は次のように考えました。

自分は何をしたいのだろうか?
→言うまでもなく、写真を媒介にして、色々と表現をしたいのだ
→それには、必ずしも写真を仕事にする必要はない筈だ
→何故なら、写真を仕事にすることと、写真で自己表現することは、
 全く別のことだからだ
→それなら、自分は、ビジネスマンとしての今の仕事で成長を目指
 す一方で、表現者として写真の道を極める生き方をしたい

アマチュア写真家もプロの職業的写真家も、写真という世界では表
現者としての違いはない筈です。それであれば、生活の糧と自分の
表現手段は分けて考えてもよいのではないか?

この決断をし、その後、様々な写真活動を続けて15年が経ち、こ
の思いは確信になっています。

これが、本メルマガのタイトルにもなっている「プロフェッショナ
ル・サンデー・フォトグラファー」の原点でした。

「プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファー」という言葉
には、

●作品を発表する以上、表現者として甘えは許されない
●プロフェッショナルを名乗る以上、自分の作品を発表する際には
 退路を断ってあらゆる批判を受けて立つ

という思いを込めました。

さて、それではプロフェッショナル・サンデー・フォトグラファー
に求められる心得とはどのようなものでしょうか?

ということで、今回はここでおしまいです。

今回はプロの写真家のイメージをお伝えすることが目的でしたが、
イメージを掴んでいただけたでしょうか?

次回は、本メルマガのテーマであるプロフェッショナル・サンデー
・フォトグラファーに求められる心得について、ご紹介させていた
だきたいと思います。

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【今週の壁紙】

1週間期間限定で1024×768の壁紙をご提供しています。
(注:必ず下記『著作権及び利用規程』をご承諾の上利用下さい)
<http://www.takahisanagai.jp/copyrights/copyrights.html>

今週の壁紙は、Tokyo Bay Areaシリーズから、1988年に川崎・
東扇島で撮影した「東京湾岸の鮮やかな朝焼け」です。この日の朝、
筋状の雲が水平線下の太陽に照らされ、ほんの数分間だけ非常に美
しい空の顔を垣間見せてくれました。工事現場で撮影中この場に居
合わせ、超広角ズームで撮影をしました。

<http://www.takahisanagai.jp/wallpaper20040201/tba8919px.html>

このページは2月7日にアクセスできなくなりますので、お早めに。

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【あとがき】

前回からご提供している壁紙は、1989年の"Tokyo Bay Area"、及び
1993年の"Tokyo Bay Area II" という個展で発表した作品群からご
紹介しています。私のホームページ『風の写真館』でも作品シリー
ズをご覧いただけますので、ご興味のある方は是非お立ち寄りくだ
さい。尚、現在Part 3を撮影中です。

今後、本メルマガでは、『風の写真館』掲載作品から一枚づつ高解
像度の壁紙をお届けしていきたいと思いますので、よろしくお願い
いたします。

ではまた、来週お会いしましょう。
                          永井孝尚

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発行人:永井孝尚 <mailto:mail@takahisanagai.jp>

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 を掲載しています。よろしければお立ち寄りください。

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